アストラゼネカのリムパーザ、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性高リスクの早期乳がん患者さんの術後補助療法における第Ⅲ相OlympiA試験で、がん再発リスクを42%低減

本資料はアストラゼネカ英国本社が2021年6月3日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

術後補助療法において臨床効果を示したBRCA遺伝子変異を対象とした最初の治療薬

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])は、第Ⅲ相OlympiA試験の結果から、リムパーザ®(一般名:オラパリブ、以下、リムパーザ)が、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の高リスク早期乳がんの患者さんにおいて、プラセボと比較して、術後補助療法で浸潤性疾患のない生存期間(iDFS)の統計学的に有意で臨床的に意義のある延長を示したと発表しました。

本試験の結果は、2021年6月3日にThe New England Journal of Medicine誌に掲載され、2021年6月6日開催の2021年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会の総会において(アブストラクト LBA#1)発表されました。

2020年には、世界中で推定230万人が乳がんと診断され、乳がん患者さんの約5%にBRCA遺伝子変異が認められています1,2

Facing Our Risk of Cancer Empowered(FORCE)のExecutive Directorであり、OlympiA試験運営委員会のメンバーでもあるSue Friedman氏は、次のように述べています。「乳がんの初期治療は大きな進歩を遂げてきましたが、患者さんはがん再発への恐怖を依然として強く抱えています。がんの再発を防ぎ、患者さんを不安にさせないよう、術後補助療法における新規の標的治療が必要とされています」。

OlympiA試験運営委員会の委員長であり、Oncology at The Institute of Cancer Research, London and Kings College Londonの教授であるAndrew Tutt氏は、次のように述べています。「OlympiA試験における世界的な大学と産業界のパートナーシップが、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する早期乳がん患者さんに対する新たな治療選択となり得る治療薬の特定につながったことに興奮しています。遺伝性のBRCA変異を有する早期の乳がん患者さんは、変異のない患者さんと比較して、通常よりも若年で乳がんと診断されます。リムパーザは、遺伝子検査によってこれらの遺伝子変異が確認された多くの患者さんにおいて、生命を脅かす再発やがんが広がる確率を低減するために、乳がんのあらゆる標準的な初期治療後に使用される可能性があります」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニットの責任者であるDave Fredricksonは次のように述べています。「今回初めて、BRCA遺伝子変異を標的治療とした薬剤が、早期乳がんの経過に変化をもたらす可能性を示し、治癒への希望をもたらしました。これらの高リスク患者さんに乳がん再発のリスクを大幅に低減する治療薬を提供することで、リムパーザが持続的な臨床効果を示し、新たな基準を打ち立てることを期待しています。これらの患者さんに一刻も早くリムパーザをお届けできるよう、規制当局と協力しています」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynesは次のように述べています。「OlympiA試験では、高リスクの早期乳がんに対する新たな治療の可能性が認められました。新たなデータでは、リムパーザによる術後補助療法が適切と考えられる早期乳がん患者さんを特定できるバイオマーカーとして、BRCA1/2遺伝子の検査を診断時に実施することが重要であることが示されています。ホルモン受容体やHER2タンパク発現に加え、BRCA遺伝子検査を実施することで、臨床現場において患者さんの治療計画を立てる上でのさらなる検討材料となります」。

試験結果から、局所治療および標準的術前または術後補助化学療法を完了した患者さんである試験対象集団全体で、リムパーザが浸潤性乳がんの再発、二次がんまたは死亡のリスクを42%低減することが示されました(ハザード比[HR]=0.58、99.5%信頼区間[CI]:0.41〜0.82、p<0.0001)。3年時点で浸潤性乳がんまたは二次がんの発現なしで生存していた患者さんの割合は、プラセボ群で77.1%だったのに対し、リムパーザ投与群で85.9%でした。

試験対象集団全体でリムパーザ投与群は、主要な副次評価項目である遠隔転移を伴わない生存期間(DDFS)においても、統計学的に有意で臨床的に意義のある延長を示し、遠隔転移再発または死亡のリスクを43%低減しました(HR=0.57、99.5% CI:0.39〜0.83、p<0.0001)。今回の初回のデータカットオフ時点で、リムパーザ投与群で低い死亡率を示しましたが、全生存期間(OS)に統計学的有意差は認められませんでした。本試験では、今後も副次評価項目として全生存期間(OS)の評価を継続します。

2021年2月、独立データモニタリング委員会(IDMC)は、OlympiA試験について早期の主要解析および報告を行うよう勧告しました。事前に規定された中間解析に基づき、IDMCは、本試験の主要評価項目であるiDFSについて優越性の基準をクリアし、プラセボと比較してリムパーザでは臨床的に意義のある治療効果が持続的に認められることを立証したと結論付けました。

本試験におけるリムパーザの安全性及び忍容性プロファイルは、これまでの臨床試験で認められた内容と一致していました。主な有害事象(AE)は、悪心(57%)、疲労(40%)、貧血(23%)および嘔吐(23%)でした。グレード3以上の有害事象は貧血(9%)、好中球減少(5%)、白血球減少(3%)、疲労(2%)および悪心(1%)でした。リムパーザの投与を受けた患者さんの約10%が、有害事象により投与を早期中止しました。

OlympiA試験は、世界中のBreast International Group(BIG)が調整を行い、NRG Oncology、米国国立がん研究所(NCI)、Frontier Science & Technology Research Foundation(FSTRF)、アストラゼネカおよびMSDの連携下で実施されている国際共同第Ⅲ相臨床試験です3。なお本試験は、米国ではNRG Oncology、米国外ではアストラゼネカが主体となり実施しています。

リムパーザは、化学療法による治療歴のある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症で米国、日本を含む多くの国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。

BRCA遺伝子変異陽性乳がんにおける術後補助療法に対するリムパーザの適応は、本邦では未承認です。

以上

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早期乳がんについて
乳がんは世界的に女性で最も罹患率の高いがんであり、全乳がんのうち、推定で70%が早期に診断されています4,5。乳がんは生物学的に最も多様な腫瘍タイプの1つであり、その発症と進行の背景には、様々な因子が存在します6。乳がんの発症におけるバイオマーカーの発見は、この疾患の科学的な理解と患者さんの治療に大きな影響を及ぼしています7

OlympiA試験について
OlympiA試験は、gBRCAmかつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、術後補助療法として投与したときのリムパーザ錠の有効性および安全性をプラセボと比較検討する、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同第Ⅲ相試験です。本試験の主要評価項目はiDFSであり、無作為割付けから最初の治療無効(局所領域再発、遠隔再発、新規がん、または総死亡)日までの期間と定義します。OSおよびDDFSを含む主要な副次評価項目は、無作為割付けから乳がんの最初の遠隔再発が診断されるまでの期間、または遠隔再発を伴わない死亡までの期間と定義します3

BIGについて
Breast International Group(BIG)は、ベルギーのブリュッセルに拠点を置く、世界中の学術的な乳がん研究グループのための国際的な非営利組織です。

1999年に欧州のオピニオンリーダーによって設立された同組織は、乳がん研究における細分化への取り組みを目指しており、現在では、専門病院、研究センター、6大陸約70ヵ国の専門家から成る50以上の志を同じくする共同研究グループのネットワークとなっています。

BIGの研究は、「BIG against breast cancer」として知られている慈善事業の支援を一部受けています。この慈善事業は一般社会や寄贈者との交流、BIGの純粋に学術的な乳がんの治験や研究プログラムの資金を調達するために使用されています。

FSTRFについて
Frontier Science & Technology Research Foundation(FSTRF)は、科学的に意義のある高品質の臨床試験を実施するために研究ネットワーク、製薬企業および研究者を支援する非営利の研究組織です。OlympiA試験には、米国の研究スタッフとスコットランドにある関連オフィスの研究スタッフが参加しました。

FSTRFは世界中の800を超える研究所、大学、医療センターの科学者や技術者と協力して、試験デザイン、解析、報告などの臨床試験プロセス全体にわたり包括的な研究サービスを提供しています。

この取り組みを通じて、FSTRFは、科学、医療および教育における統計学的科学、実践ならびにデータ管理技術の応用を前進させることを目指しています。

NRG Oncologyについて
NRG Oncologyは、米国の国立衛生研究所の一部であるNCIが資金を提供するネットワークグループです。NCIが資金提供したすべてのネットワークグループが本試験に参加しました。NCIとアストラゼネカは、Cooperative Research and Development Agreement(協力的研究開発契約)のもとで提携しています。

NRG Oncologyは、治療プラクティスを変えることを目的とした多施設共同臨床研究や橋渡し研究の実施により、がん患者さんの生活を向上させることを使命としており、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project、Radiation Therapy Oncology Group、Gynaecologic Oncology Groupの研究機関が集結した組織です。

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2(乳がん感受性遺伝子1/2)は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の遺伝的安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、または正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなり、リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めます8-11

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPと結合し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

リムパーザは、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、現在EU諸国を含む多くの国で承認されており、白金製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としても米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認されています。米国においては、HRR機能不全陽性進行卵巣がん(BRCAmおよび/またはゲノム不安定性)患者さんに対するベバシズマブとの併用療法が初回治療後の維持療法としても承認されました。また、化学療法による治療歴のある生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、日本を含む多くの国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。さらに、米国、欧州、日本、およびその他数カ国においては、生殖細胞系列BRCAm転移性膵がんの治療薬としても承認されています。また、米国においては、HRR関連遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(BRCAmおよびその他のHRR関連遺伝子変異陽性)の治療薬として承認されており、EUおよび日本においてはBRCAm転移性去勢抵抗性前立腺がんに対して承認されています。加えて、卵巣がん、乳がん、膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国において進行中です。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、全世界で4万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的治療とした薬剤であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

なお、本リリースに記載の効能・効果(適応症)については本邦で承認されている記載と異なる場合があります。本邦における承認状況については、こちらをご確認ください。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおける乳がん領域
アストラゼネカは、乳がんの生物学的な理解が深まってきていることから、より効果的な治療を患者さんに提供するべく、乳がんの分類や治療に対する現在の臨床的パラダイムへの挑戦、再定義を始めており、乳がんによる死亡をなくすことを目標に掲げています。

アストラゼネカは、生物学的に多様な乳がんの腫瘍環境に対応するべく、異なる作用機序の承認済および開発中の有望な化合物からなる包括的なポートフォリオを有しています。アストラゼネカは、フェソロデックス(フルベストラント)およびゾラデックス(ゴセレリン)、ならびに次世代の選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)および新薬候補のcamizestrant(AZD9833)によって、HR陽性乳がんの転帰を継続的に変革することを目指しています。PARP阻害剤であるリムパーザ(オラパリブ)は、BRCA遺伝子変異を有する転移性乳がん患者さんに対する標的治療選択肢です。アストラゼネカとMSDは、BRCA遺伝子変異を有する転移性乳がんの患者さんにおけるリムパーザの研究を継続しており、これらの患者さんを疾患の早期段階で治療する新たな機会を模索しています。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカは、あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、オンコロジー領域の変革をけん引していきます。

アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。当社は持続的なイノベーションにより、医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。

アストラゼネカはがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、オンコロジーおよび循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオ・医薬品において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については

https://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. World Health Organization. Estimated number of cases in 2020, worldwide, both sexes, all ages. Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/20-Breast-fact-sheet.pdf. Accessed May 2021.
2. Mitri Z, et al. The HER2 Receptor in Breast Cancer: Pathophysiology, Clinical Use, and New Advances in Therapy. Chemother Res Pract. 2012;743193.
3. ClinicalTrials.gov. Olaparib as Adjuvant Treatment in Patients with Germline BRCA mutated High Risk HER2 Negative Primary Breast Cancer (OlympiA). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02032823. Accessed May 2021.
4. Breast Cancer School. Will I survive breast cancer? Available at: https://www.breastcancercourse.org/will-i-survive-breast-cancer/. Accessed May 2021.
5. Bertozzi S, et al. Biomarkers in Breast Cancer. Intechopen. 2018.
6. Yersal O, and Barutca S. Biological Subtypes of Breast Cancer: Prognostic and therapeutic implications. World J Clin Oncol. 2014;5(3):412-424.
7. Rivenbark A, et al. Molecular and Cellular Heterogeneity in Breast Cancer: Challenges for Personalized Medicine. Am J Pathol. 2013;183(4):1113-1124.
8. Roy R, et al. BRCA1 and BRCA2: Different Roles in a Common Pathway of Genome Protection. Nat Rev Cancer. 2021;12(1):68-78.
9. Wu J, et al. The Role of BRCA1 in DNA Damage Response. Protein Cell. 2010;1(2):117-11.
10. Gorodetska I, et al. BRCA Genes: The Role in Genome Stability, Cancer Stemness and Therapy Resistance. J Cancer. 2019;10(9):2109-2127.
11. Li H, et al. PARP Inhibitor Resistance: The Underlying Mechanisms and Clinical Implications. Mol Cancer. 2020;19:107.

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