アストラゼネカとMSDのリムパーザ、進行卵巣がん、前立腺がん、膵がんの治療薬として日本における適応拡大を同時取得

第Ⅲ相PAOLA-1、PROfoundおよびPOLO試験結果に基づく承認取得

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム、以下「アストラゼネカ」)とMSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:ヤニー・ウェストハイゼン、以下「MSD」)は、「リムパーザ錠®」(一般名:オラパリブ、以下「リムパーザ」)について、2020年12月25日付で、「相同組換え修復欠損を有する卵巣癌におけるベバシズマブ(遺伝子組換え)を含む初回化学療法後の維持療法」、「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」および「BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵癌における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法」の3つの適応症を対象に、厚生労働省より承認を取得いたしましたのでお知らせいたします。

厚生労働省による今回の同時承認は、The New England Journal of Medicine誌にて発表された第Ⅲ相PAOLA-1PROfound、およびPOLO試験の肯定的な中間解析結果に基づいています。

アストラゼネカの執行役員 研究開発本部長の大津智子は次のように述べています。「今回の3がん種同時適応拡大により、日本の多くのがん患者さんに、バイオマーカーに基づいたリムパーザによる治療を提供できることを大変嬉しく思います。今回の承認は、治療決定におけるバイオマーカーの重要性を推し進めるものです。個別化医療がより行われることで、個々の患者さんに最適な治療選択が行われ再発・進行を大きく遅らせることを期待しています」。

MSD 副社長執行役員 グローバル研究開発本部長の白沢博満は次のように述べています。「進行卵巣がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん、転移性膵がんは、いずれも大きなアンメット・メディカルニーズを伴うがんです。患者さんにとって、治療の選択肢は非常に限られてきました。リムパーザは、前立腺がんおよび膵がんに対して承認された日本初のPARP阻害剤であり、分子標的薬が新たに承認されることで、個別化医療の新たな時代をさらに前進させ、日本におけるこれらのがんの治療法が大きく変わっていくことが期待されます」。

相同組換え修復欠損(HRD)を有する卵巣がんに対する一次治療後の維持療法におけるベバシズマブとの併用療法に対するリムパーザの承認
この適応症に対する承認は、第Ⅲ相PAOLA-1試験のバイオマーカーによるサブグループ解析の結果、HRD陽性進行卵巣がん患者さんにおいて、リムパーザとベバシズマブの併用療法による維持療法がベバシズマブ単剤療法に比べて、無増悪生存期間(PFS)の大幅な延長を示したことに基づいています。

2018年には、日本で卵巣がんと診断された女性は1万人を超え、卵巣がんにより死亡した女性は5千人を超えています1。進行卵巣がんの患者さんの半数がHRD陽性を有していると報告されています2,3

BRCA遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するリムパーザの承認
この適応症に対する承認は、第Ⅲ相PROfound試験のサブグループ解析の結果、BRCA1/2遺伝子変異陽性mCRPC患者さんにおいて、リムパーザ投与群がエンザルタミドまたはアビラテロン酢酸エステル(アビラテロン)投与群に比べて、画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)および全生存期間(OS)の大幅な延長を示したことに基づいています。リムパーザは、進行前立腺がんの治療薬として承認された日本で初めてかつ唯一のPARP阻害剤です。

日本における前立腺がんの罹患数は、2017年で男性において最も多く、新たに前立腺がんと診断された症例は9万人を超えました1。mCRPCに対する有効な治療法は限られており、これら患者さんの生存期間は9~13カ月と短くなっています4,5。その中でも、BRCA遺伝子変異陽性のmCRPC患者さんの予後は特に悪く6、mCRPC患者さんの約12%にBRCA変異が認められます7

生殖細胞系列BRCA(gBRCA)遺伝子変異を有する治癒切除不能な膵がんに対するリムパーザの承認
この適応症に対する承認は、第Ⅲ相POLO試験の結果、gBRCA遺伝子変異を有する転移性膵がん患者さんにおいて、リムパーザがプラセボに比べて、統計的に有意でかつ臨床的に意義のあるPFSの延長を示したことに基づいています。リムパーザは、この疾患の治療薬として承認された日本で初めてかつ唯一のPARP阻害剤です。

膵がんは、一般的ながんの中でも生存率が最も低いがん種の1つです。2018年には日本で膵がんによる死亡は約4万人に上り、がんによる死因として4番目のがん種となりました1,8。また日本における膵がんの罹患率は世界で5番目に高く、2018年には43,000人が新たに膵がんと診断されています1,9。転移性膵がん患者さんの約5~7%で生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異が認められます10

以上

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PAOLA-1試験について
PAOLA-1試験は、新たにFIGO進行期分類III - IV期の高異型度漿液性または類内膜卵巣がん、卵管がんまたは腹膜がんと診断され、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法とベバシズマブとの併用療法による初回治療により完全または部分奏効を示した患者さんを対象とし、初回治療後の維持療法としてリムパーザを標準治療であるベバシズマブに追加した併用療法と、ベバシズマブ単剤療法の有効性および安全性を比較検討した無作為化二重盲検第Ⅲ相試験です。アストラゼネカとMSDは、本試験において主要評価項目である試験集団全体でのPFSが延長したことを2019年8月に発表しています。

第Ⅲ相PAOLA-1試験のサブグループとなるHRD陽性進行卵巣がん患者さんに対して、リムパーザとベバシズマブの併用による維持療法は、病勢進行または死亡のリスクを67%低下させることが示されました(ハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.25~0.45という結果に基づく)。HRD陽性進行卵巣がん患者さんにおけるPFSの中央値は、ベバシズマブ単剤療法群では17.7カ月であったのに対し、リムパーザとベバシズマブ併用療法群では37.2カ月に延長されました。

PROfound試験について
PROfound試験は前向き無作為化非盲検多施設共同第Ⅲ相試験で、アビラテロンまたはエンザルタミドとの比較において、リムパーザの有効性と安全性を評価する試験です。本試験は、アビラテロンもしくはエンザルタミドまたはその両剤による治療歴があり、かつBRCA1/2ATM、またはその他12の相同組換え修復(HRR)関連遺伝子のいずれかに変異が認められるmCRPC患者さんを対象に実施しました。

この試験は、HRR関連遺伝子変異陽性を有する患者さんを2つのコホートに振り分けて組み入れ、解析するようデザインされました。主要評価項目はBRCA1/2またはATM遺伝子変異を有する患者さんのrPFSであり、リムパーザが臨床的効果を示した場合、HRR関連遺伝子変異陽性(BRCA1/2ATMおよびその他12のHRR関連遺伝子)を有する全患者さんを含めた集団も対象に解析を実施しました。アストラゼネカとMSDは2019年8月、本試験において主要評価項目であるrPFSが延長したと発表しました。

第Ⅲ相PROfound試験のサブグループ解析結果により、BRCA1/2遺伝子変異陽性mCRPC患者さんにおいて、リムパーザ投与群では病勢進行または死亡のリスクが78%低下し(HR:0.22、95% CI:0.15~0.32)、rPFSの中央値も、対照薬であるエンザルタミドまたはアビラテロン投与群の3.0カ月に対し、リムパーザ投与群では9.8カ月への延長が示されました。また、リムパーザ投与群では死亡リスクが37%低下し(HR:0.63、95% CI:0.42~0.95)、OS中央値は、エンザルタミドまたはアビラテロン投与群では14.4カ月であったのに対し、リムパーザ投与群では20.1カ月に延長されました。

POLO試験について
POLO試験は、維持療法としてのリムパーザ単剤投与群(300mg錠剤、1日2回)とプラセボ投与群を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第Ⅲ相試験です。本試験では、白金系抗悪性腫瘍剤を含む一次化学療法で病勢進行が認められなかったgBRCA遺伝子変異陽性膵がん患者さん154人をリムパーザ単剤投与群又はプラセボ投与群に3:2の割合で無作為化し、病勢進行が認められるまでリムパーザまたはプラセボを投与しました。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、二次進行または死亡までの期間、客観的奏効率、および健康関連のQOLでした。

第Ⅲ相POLO試験の結果より、gBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん患者さんにおいて、PFSの中央値が、プラセボ投与群で3.8カ月であったのに対し、リムパーザ投与群では7.4カ月に延長されたほか、病勢進行または死亡のリスクはリムパーザ群では47%低下しました(HR:0.53、95% CI:0.35~0.82、p=0.004)。

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の遺伝的安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、または正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなり、リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めます4,11-13

相同組換え修復欠損(HRD)について
卵巣がんのサブグループであるHRDは、BRCA遺伝子変異をはじめ、その他多くの遺伝的異常を含みます。BRCA遺伝子変異と同様に、HRDは正常細胞のDNA修復機構を妨げ、リムパーザを含むPARP阻害剤に対する感受性をもたらします14

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

日本においてリムパーザは、2018年1月には白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として承認され、2018年7月には化学療法による治療歴のある生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの治療薬として承認されています。また、2019年6月には白金製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法として承認されました。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、全世界で3万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的とした新薬であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを数多く保有しています。2014年から2020年までの期間に7つの新薬の販売を開始し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、注力する肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体、エピジェネティクスおよび細胞療法の6つの科学的基盤を強化し、個別化併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器・免疫疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

日本においては、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社についてはhttps://www.astrazeneca.co.jp/ をご覧ください。

MSDのがん領域における取り組み
MSDでは、画期的な科学を革新的ながん治療薬に変換して世界中のがん患者さんを助けることに取り組んでいます。オンコロジー事業にとって、がんと闘う人々を助けることは私たちの情熱であり、がん治療薬へアクセスしやすくすることは私たちの責任です。また、がん領域における取り組みの一環として、医薬品業界で一二を争う急成長を遂げている開発プログラムにより、30種類以上のがんに対するがん免疫療法の可能性を模索しています。また、引き続き戦略的買収を通じて、がん免疫療法のポートフォリオを強化し、進行がんの治療を改善する可能性をもつ有望ながん治療薬候補の開発を最優先に進めています。当社のオンコロジー臨床試験について詳しくは、当社ウェブサイトをご覧ください。

MSDについて
MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、125年以上にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイト( www.msd.co.jp )やFacebook、Twitter、YouTubeをご参照ください。

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