アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:堀井 貴史、以下、アストラゼネカ)は、免疫不全患者さんに対するCOVID-19の曝露前発症抑制を目的として開発を進めている、長時間作用型モノクローナル抗体sipavibartについて、本日製造販売承認を厚生労働省に申請したことをお知らせします。
本申請は、第III相SUPERNOVA試験の結果に基づくものです。本試験により、免疫不全患者集団においてsipavibart投与群が対照群(チキサゲビマブ/シルガビマブまたはプラセボ)と比較して症候性COVID‐19の発症率を統計学的に有意に低下させたことが示されました1。免疫不全患者集団には、血液がん患者さん、臓器移植レシピエント、透析を要する末期腎不全患者さん、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者さん、免疫抑制剤を使用中の患者さんが含まれています。
2023年の人口動態統計によると2020年以降COVID-19による累計死者数が10万人を超え、COVID-19が5類感染症とされた2023年5月以降でも2024年3月までの11カ月で約4万人のCOVID-19関連死亡数2があり依然として公衆衛生上の課題は残存しています。免疫不全患者さんにおいては、COVID-19ワクチン接種により十分な免疫応答が得られず、COVID-19に感染した場合、一般の方と比べて重症化率及び死亡率が高かったことが海外の大規模なリアルワールドエビデンス研究であるINFORMで確認されました3。INFORM研究によると免疫不全患者さんは、研究の対象集団の約4%以下であるにもかかわらず、COVID-19ワクチンの反復投与後であってもCOVID-19による入院、ICU入院、死亡の約25%を占めていました3-8。世界保健機関がパンデミックの終息を宣言してから1年が経過したものの、免疫不全患者さんにとっては依然として重症化リスクの脅威が続くばかりでなく、感染を契機とした原疾患の治療の遅延も課題となっています。
一般社団法人 日本移植学会の理事長であり、東京大学 医学部附属病院心臓外科 教授の小野 稔先生は本申請に向けて次のように述べています。「臓器移植患者さんは免疫抑制下にあることから、COVID-19 感染による重症化率や死亡率が一般人と比較して高いことが知られています。移植患者の一般人口と比較した標準化死亡比は、パンデミック期間を通じて一貫して高く、今後も臓器移植後患者はワクチン接種の継続や抗体製剤などによる防御、また一般的なマスク、手洗い、人ごみを避けるなどの感染予防策の継続が重要だと考えています。今後、予防に対する選択肢が増えることに期待しています」。
一般社団法人日本免疫不全・自己炎症学会の副理事長であり、東京医科歯科大学大学院小児地域成育医療学講座教授の金兼 弘和先生は次のように述べています。「原発性免疫不全症候群は、先天的に免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称であり、感染症に罹りやすく、重症化しやすいことが特徴です。これらの患者さんはCOVID19が 5 類感染症に移行後もいまだ脅威であることに変わりなく、引き続き生活の制限を余儀なくされています。ワクチンによる免疫獲得が不十分なこれらの患者さんは、他に予防手段がなく、中和抗体薬は引き続き日常生活を取り戻すために重要な役割を果たしています。変異株が進化し続ける状況の中、既存の変異株に効果があるsipavibartを次の変異株の流行前になるべく早く導入する必要があると考えます。このようなワクチン以外の予防薬として新たな選択肢が増えることは重要であり、重症化リスクの高いこれらの患者さんに対し、より確実な予防策として、長時間作用型の曝露前予防投与が本邦でも遅れることなく早期に使用可能となることを期待しています」。
アストラゼネカ 執行役員 研究開発本部長の大津 智子は、次のように述べています。「COVID-19は免疫不全の患者さんにとっては未だ疾病負担の高い感染症であることに変わりはなく、多くの患者さんは不安を抱えたまま生活をしています。これまで年末年始に比較的大きな感染拡大が見られていること9、また、2024年度からは、COVID-19ワクチンの接種対象者がこれまでとは異なり高齢者が中心となることから、流行周期の推測が難しく、仮に大規模な流行となった場合には、免疫不全患者さんにおいても重症化リスクが増大することが考えられるため、早期に予防の手段を提供することが重要であると考えています。Sipavibartの承認がされた暁には、COVID-19の感染症予防から誰一人として取り残されることのない社会の実現の一助になることを願っています」。
Sipavibartは、2024年6月に欧州連合(EU)においてCOVID-19発症抑制を目的に迅速審査の対象として指定されました。日本においても、免疫不全を抱える患者さんが感染症予防から取り残されることのないよう、承認に向け規制当局とも緊密に連携してまいります。
以上
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第III相SUPERNOVA試験 について
SUPERNOVAは、COVID-19の発症抑制を目的としてsipavibartの安全性および有効性を対照(チキサゲビマブ/シルガビマブまたはプラセボ)と比較評価する大規模な第III相、国際共同、無作為化、二重盲検比較試験であり、免疫不全患者さんを対象にCOVID-19に対する有効性データを提供する唯一の試験です1。
本試験は、2つの主要評価項目を達成しました。1つはSARS-CoV-2のすべての変異株によって引き起こされる症候性COVID-19発症の相対リスクの減少、もう1つはF456L変異を有さないSARS-CoV- 2変異株によって引き起こされる症候性COVID-19発症の相対リスクの減少でした。SUPERNOVA試験では、試験期間中にCOVID-19感染者において複数の異なるSARS-CoV-2変異株が確認されるという、変異株が進化し続ける状況において、sipavibartの潜在的な有用性が示されました1。
Sipavibartについて
Sipavibart(開発コード:AZD3152)は開発中のCOVID-19に対する長時間作用型モノクローナル抗体であり、スパイクタンパク質と宿主受容体ACE2との相互作用を中和することで、オミクロン株や従来株に対して幅広く強力な効果を発揮するようデザインされています7。
SipavibartはSARS-CoV-2感染後の回復期患者さんにより提供されたB細胞に由来します。Sipavibartはエバシェルド®(一般名:チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え))と同じ抗体骨格を用いて作製されており、同じ半減期延長型でFcエフェクター機能が低下し、補体C1q結合プラットフォームを用いて最適化されています7。Fcエフェクター機能の低下は、ウイルス特異的抗体が感染や病気を阻害するのではなく促進してしまう現象である抗体依存性感染増強のリスクを最小限に抑えることを目的としています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社の革新的な医薬品は125カ国以上で販売されており、世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.comまたは、ソーシャルメディア@AstraZenecaをフォローしてご覧ください。
日本においては、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝、呼吸器・免疫疾患およびワクチン・免疫療法を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく 活動しています。アストラゼネカ株式会社についてはhttps://www.astrazeneca.co.jp/をご覧ください。フェイスブックAstraZeneca.JapanとインスタグラムAstraZeneca / アストラゼネカもフォローしてご覧ください。
References
- AstraZeneca. (16 May 2024). SUPERNOVA Phase III trial of sipavibart long-acting antibody met primary endpoints in preventing COVID-19 in immunocompromised patient population [Press Release]. Las Accessed June 2024 https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2024/2024052202.html
- 厚生労働省:死亡診断書(死体検案書)の情報を用いたCOVID-19関連死亡数の分析
- Evans RA et al. Impact of COVID-19 on Immunocompromised Populations during the Omicron Era: Insights from the Observational Population-Based INFORM Study. The Lancet Regional Health – Europe. 2023;0(0):100747. doi:10.1016/J.LANEPE.2023.100747
- Dube S. Continued Increased Risk of COVID-19 Hospitalisation and Death in Immunocompromised Individuals Despite Receipt of ≥4 Vaccine Doses: Updated 2023 Results from INFORM, a Retrospective Health Database Study in England. Poster P0409 at ECCMID 2024.
- Turtle L. Individuals with Multiple Sclerosis Are at High Risk for COVID-19 Hospitalisation and Death Despite High Rates of Vaccination: Results from the England INFORM Study. Oral Presentation at ECCMID 2024.
- Meeraus W. High Prevalence of Immunocompromising Conditions Among Patients with Severe Acute Respiratory Infection, Including SARS-CoV-2: Results from a Multicentre, Test-Negative Case Control Study. Abstract #01796 at ECCMID 2024.
- Meeraus W. Immunocompromise, Cancer and Other Comorbidities in Patients with Severe Acute Respiratory Infection Testing Positive Versus Negative for SARS-CoV-2: A Post Hoc Analysis of COVIDRIVE Data from May 2021 to May 2023. Abstract #01800 at ECCMID 2024.
- Ketkar A et al. Assessing the Risk and Costs of COVID-19 in Immunocompromised Populations in a Large United States Commercial Insurance Health Plan: The EPOCH-US Study. Curr Med Res Opin. 2023. 39 (8):1103-1118.
- 厚生労働省:データからわかるー新型コロナウイルス感染症情報ー新規陽性者数・死亡者数(日別)2020年1月16日~2023年5月7日