本資料はアストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が2023年11月17日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。
ファーストインクラスのAKT阻害薬は、特異的な遺伝子変異(PIK3CA、AKT1またはPTEN)を
有する乳がん患者さんの治療に変化をもたらし得る
フェソロデックス単独療法との比較で、バイオマーカー変異を有する患者さんにおいて
カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法が病勢進行
または死亡リスクの50%低減を示したCAPItello-291試験に基づく承認
AstraZeneca PLC(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、米国において、Truqap™(一般名:カピバセルチブ、以下、カピバセルチブ)とフェソロデックス®(一般名:フルベストラント、以下、フェソロデックス)の併用療法が、1つ以上の遺伝子変異(PIK3CA、AKT1またはPTEN)を有するホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の局所進行性または転移性乳がんの成人患者さんの治療薬として米国で承認されたと発表しました。なお、対象は、転移性乳がんに対する内分泌療法を1レジメン以上受けた後に増悪したか、または術後補助療法完了後12カ月以内に再発した乳がん患者さんです。
米国食品医薬品局(FDA)による今回の承認は、今年初めにThe New England Journal of Medicineで発表された第Ⅲ相CAPItello-291試験の結果に基づくものです1。本試験では、PI3K/AKT経路の遺伝子変異を有する乳がん患者さんにおいて、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法が、フェソロデックス単剤療法との比較で病勢進行または死亡のリスクを50%低下させたことが示されました(ハザード比0.50、95%信頼区間0.38-0.65;p=<0.001;無増悪生存期間(PFS)中央値7.3カ月対3.1カ月)。
乳がんは世界中で最も多く診断されているがんであり、がん関連死の主要な原因の1つです2。HR陽性乳がん(エストロゲンまたはプロゲステロン受容体、またはその両方を発現)は最も一般的な乳がんのサブタイプであり、乳がんの65%以上はHR陽性かつHER2低発現または陰性と考えられています3。また、PIK3CA、AKT1およびPTENの遺伝子変異が高頻度で認められ、HR陽性進行乳がん患者さんの最大50%がこれらの遺伝子変異を有します4-6。HR陽性乳がんの治療には内分泌療法が広く用いられていますが、進行乳がん患者さんの多くは一次治療のCDK4/6阻害薬と内分泌療法に対する耐性を獲得しているため、さらなる治療選択肢が必要です7。
米国Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)の 腫瘍内科医であるKomal Jhaveri氏は次のように述べています。「HR陽性進行乳がん患者さんの多くは、標準一次治療の内分泌療法に対して病勢進行または治療耐性を示すため、さらに有効な治療の開発が急務です。カピバセルチブとフルベストラントの併用療法は、この機序の併用療法としては初めて、特定のバイオマーカーを有する、50%までのHR陽性進行乳がん患者さんに対し、必要性の高い新たな治療選択肢となり、病状をコントロールできる期間を延長できる可能性があります」。
アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニットの責任者であるDave Fredricksonは次のように述べています。「カピバセルチブの米国での迅速な承認は、HR陽性乳がんにおけるPI3K/AKT経路の重要な役割と、診断時検査の必要性を裏付けています。最大で50%の患者さんがこれら特定の変異を有するためです。今回の承認は、ファーストインクラスの治療薬として、これら特定の変異をもつ疾患を有する米国の患者さんにとって重要な新しい選択肢を提供するものです。私たちは、世界中の多くの乳がん患者さんにカピバセルチブをお届けできることを期待しています」。
CAPItello-291試験において、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法の安全性プロファイルは、この併用療法を評価した過去の試験で確認されたものと類似していました1。
この承認と同時に、FDAは関連する遺伝子変異(PIK3CA、AKT1およびPTEN)を検出するためのコンパニオン診断検査も承認しました。
米国の承認申請に対しては、優先審査指定が行われ、「Project Orbis」の下で審査が行われました。「Project Orbis」は参加する国際パートナー国間で抗がん剤の承認申請を共同で審査する枠組みであり、世界中の患者さんのために迅速な承認を促す取り組みです。「Project Orbis」の一環として、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法について、オーストラリア、ブラジル、カナダ、イスラエル、シンガポール、スイス、英国の規制当局でも審査中です。
現在、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法の承認申請については、中国、EU、日本およびその他いくつかの国で審査中です。
※フェソロデックスのHR陽性進行乳がんに対するカピバセルチブとの併用療法およびカピバセルチブは本邦未承認です。
以上
*****
財務上の考慮事項
今回の米国での承認を受けて、Astex Therapeutics社は、両社間の合意に沿った将来の販売に関するロイヤルティとともに、米国での同製剤の最初の商業販売に関し、アストラゼネカからのマイルストーンの支払いを受領します。
ホルモン受容体(HR)陽性乳がんについて
乳がんは世界中で最も多く診断されているがんであり、がん関連死の主要な原因の1つです2。2020年には世界中で200万人以上が乳がんと診断され、68万5000人近くが死亡しました2。米国では、2023年には29万人以上の患者さんが診断され、4万3000人以上が死亡すると予想されています8。
HR陽性乳がん(エストロゲン受容体またはプロゲステロン受容体を発現、またはその両方を発現)は、最も一般的な乳がんのサブタイプであり、乳がんの65%以上がHR陽性かつHER2低発現または陰性と考えられます3。また、PIK3CA、AKT1、およびPTENの変異は頻繁に起こり、HR陽性進行乳がん患者さんの最大50%に認められます4-6。
HR陽性乳がん細胞の増殖は、多くの場合、エストロゲン受容体(ER)によって促進され、ホルモン療法に感受性を有する乳がん(ER-driven disease)を標的とする内分泌療法は、進行乳がんに対する一次治療として広く実施されており、しばしばCDK4/6阻害薬と併用されます7,9,10。しかし、CDK4/6阻害薬や既存の内分泌療法に対する耐性が多くの進行乳がん患者さんで生じます9。一旦これが生じると、治療選択肢が制限されます。化学療法が現在の標準治療ですが、生存率は低く、診断後5年以上生存するのは患者さんの30%であると推定されています3,9,11。
ホルモン療法に感受性を有する乳がん患者さんに対する内分泌療法の最適化と耐性の克服ならびにホルモン療法に抵抗性となった乳がん患者さんに対する新たな治療の特定は、盛んに研究が行われている領域です。
CAPItello-291試験について
CAPItello-291試験は、二重盲検、無作為化第Ⅲ相試験です。局所進行性(手術不能)または転移性HR陽性、HER2低発現または陰性(免疫組織化学検査(IHC)0または1+、またはIHC2+in situハイブリダイゼーション(ISH)陰性)の乳がんを対象に、カピバセルチブとフェソロデックスの併用療法の有効性をプラセボとフェソロデックスの併用療法との比較で評価しています。
本試験には、組織学的に確認されたHR陽性、HER2低発現または陰性の乳がん患者さんのうち、CDK4/6阻害薬併用の有無にかかわらずアロマターゼ阻害薬による治療中または治療後に再発または進行した成人患者さん、進行がんに関しては化学療法1ラインまでの患者さん計708人が登録されました。試験には、全患者集団におけるPFS、およびPI3K/AKT経路(PIK3CA、AKT1またはPTEN遺伝子)に変異が認められる腫瘍を有する患者集団におけるPFSの2つの主要評価項目が設定されています。本試験では、腫瘍の約40%にPIK3CA/AKT1/PTEN遺伝子変異が認められました。また、約70%の患者さんがCDK4/6阻害薬による前治療を受けていました。
カピバセルチブについて
カピバセルチブは、ファーストインクラスの、3つのAKTアイソフォーム(AKT1/2/3)の強力なアデノシン三リン酸(ATP)競合阻害薬です。カピバセルチブは、400mgを1日2回、4日間の投与と3日間の休薬からなる間欠投与スケジュールに従って投与されます。この投与スケジュールは、忍容性および標的阻害の程度に基づいて、初期の試験段階で採用されました。
カピバセルチブは現在、複数の乳がんサブタイプおよび他の腫瘍タイプの治療薬として、単剤療法または確立された治療との併用療法として、第Ⅲ相試験において評価されています。現在進行中の臨床研究プログラムは、PI3K/AKT経路を介したシグナル伝達に依存する腫瘍、およびこの経路にバイオマーカー変異を有する腫瘍に焦点を当てています。
カピバセルチブは、Astex Therapeutics社との共同研究(およびInstitute of Cancer Research ならびにCancer Research Technology Limited社との共同研究)を経て、アストラゼネカにより創製されました。
フェソロデックスについて
フェソロデックスは、内分泌療法による治療歴がないか、術後抗エストロゲン補助療法中もしくは終了後に再発した再発乳がんや抗エストロゲン療法中に病勢進行した進行性乳がんを対象として、エストロゲン受容体陽性の局所進行性または転移性乳がんの閉経後女性患者さんに対して適応される内分泌療法です。
米国、欧州および日本では、フェソロデックスはCDK4/6阻害薬との併用療法で、内分泌療法後にがんが進行したHR陽性かつHER2陰性の進行性または転移性乳がん患者さんの治療薬としても承認されています。フェソロデックスは、病勢進行のキードライバーであるエストロゲン受容体を遮断し、分解することにより、腫瘍の増殖を遅らせるのに役立つホルモン療法です。
フェソロデックスは、HR陽性進行乳がんの治療薬として単剤療法、またはCDK4/6、PI3K、AKT阻害薬を含む様々な薬剤クラスとの併用療法で承認されており、その他薬剤クラスの医薬品との併用療法で検討されています。
※フェソロデックスのPI3K阻害薬との併用療法は本邦未承認です。
アストラゼネカにおける乳がん領域について
アストラゼネカは、乳がんの生物学的な理解が深まってきていることから、より効果的な治療を患者さんに提供するべく、乳がんの分類や治療に対する現在の臨床的パラダイムへの挑戦、再定義を始めており、乳がんによる死亡をなくすことを目標に掲げています。
アストラゼネカは、生物学的に多様な乳がんの腫瘍環境に対応するべく、異なる作用機序の既承認および開発中の有望な化合物からなる包括的なポートフォリオを有しています。
アストラゼネカは、フェソロデックス(フルベストラント)およびゾラデックス(ゴセレリン)による治療成績を継続的に改善し、ファーストインクラスのAKT阻害薬であるカピバセルチブのみならず、次世代の経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり新薬候補であるカミゼストラントによって、HR陽性乳がん領域の変革を目指しています。
PARP阻害剤リムパーザ(一般名:オラパリブ)は、BRCA遺伝子変異を有する早期および転移性乳がん患者さんに対する標的治療薬です。アストラゼネカとMSD(北米およびカナダではMerck & Co., Inc.)は、これらの状況におけるリムパーザの研究と早期がんにおけるその可能性の探索を継続しています。
悪性度の高い乳がんであるトリプルネガティブ乳がん患者さんに必要な治療選択肢を提供するために、アストラゼネカはダトポタマブ デルクステカン単独または免疫治療薬のイミフィンジ(デュルバルマブ[遺伝子組換え])との併用療法、カピバセルチブと化学療法の併用療法、イミフィンジとリムパーザやエンハーツを含む他のがん治療薬との併用試験を行います。
※カピバセルチブ、ダトポタマブ デルクステカン、カミゼストラント、乳がんに対するイミフィンジおよびリムパーザを含む他のがん治療薬との併用は本邦未承認です
アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカは、あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、オンコロジー領域の変革をけん引していきます。
アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。当社は持続的なイノベーションにより、医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。
アストラゼネカは、がん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ医薬品企業であり、主にオンコロジー領域、希少疾患領域、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオファーマ領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.comまたは、ソーシャルメディア@AstraZenecaをフォローしてご覧ください。
References
- Turner N, et al. Capivasertib in Hormone Receptor–Positive Advanced Breast Cancer. NEJM. 2023; 388:2058–70.
- Sung H, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA Cancer J Clin. 2021; 10.3322/caac.21660.
- National Cancer Institute. Surveillance, Epidemiology and End Results Program. Available at: https://seer.cancer.gov/statfacts/html/breast-subtypes.html. Accessed November 2023.
- Howell S J, et al. Fulvestrant plus capivasertib versus placebo after relapse or progression on an aromatase inhibitor in metastatic, oestrogen receptor-positive, HER2-negative breast cancer (FAKTION). J Clin Oncol. 2022; 23:851-64.
- Hortobagyi G N, et al. Correlative Analysis of Genetic Alterations and Everolimus Benefit in Hormone Receptor-Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2-Negative Advanced Breast Cancer: Results From BOLERO-2. J Clin Oncol. 2016; 34:419-26.
- Millis S Z, et al. Landscape of phosphatidylinositol-3-kinase pathway alterations across 19784 diverse solid tumors. JAMA Oncol. 2016;2(12):1565-73.
- Lin M, et al. Comparative Overall Survival of CDK4/6 Inhibitors Plus Endocrine Therapy vs. Endocrine Therapy Alone for Hormone receptor-positive, HER2-negative metastatic breast cancer. J Cancer. 2020; 10.7150/jca.48944.
- American Cancer Society. Key Statistics for Breast Cancer. Available at: https://www.cancer.org/cancer/breast-cancer/about/how-common-is-breast-cancer.html. Accessed November 2023.
- Lloyd M R, et al. Mechanisms of Resistance to CDK4/6 Blockade in Advanced Hormone Receptor–positive, HER2-negative Breast Cancer and Emerging Therapeutic Opportunities. Clin Cancer Res. 2022; 28(5):821-30.
- Scabia V, et al. Estrogen receptor positive breast cancers have patient specific hormone sensitivities and rely on progesterone receptor. Nat Commun. 2022; 10.1038/s41467-022-30898-0.
- National Comprehensive Cancer Network. Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines). Available at: https://www.nccn.org/guidelines/guidelines-detail?category=1&id=1419. Accessed November 2023.