アストラゼネカのアカラブルチニブ(Calquence)、新型コロナウイルス感染症19例の入院患者さんの大多数において有望な臨床効果を示す

本資料はアストラゼネカ英国本社が2020年6月5日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

ほとんどの患者さんが炎症関連検査マーカーの改善および酸素需要量の減少を示す

検証を目指す複数のグローバル試験が進行中

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])は、6月5日、アストラゼネカのブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤アカラブルチニブ(Calquence®)が、Science Immunologyに掲載された試験結果1によると、新型コロナウイルス感染症の重症患者さんの炎症マーカーを低下させるとともに臨床転帰を改善したことを発表しました。

重度の低酸素血症および/または炎症を有する新型コロナウイルス感染症の入院患者さん19例は、専門家による評価済みの症例集積であり、本試験は、アストラゼネカの科学者を含む米国の治験担当医師らの共同研究として、米国の国立衛生研究所国立がん研究所の医学博士Wyndham Wilson氏および医学博士Louis Staudt氏 により主導されています。

本公表文献はSARS-CcV-2ウイルスに起因する重度呼吸器疾患患者さんに対するアカラブルチニブの効果について解説しています1。ウイルス誘発性の過剰免疫反応「高サイトカイン血症(サイトカインストーム)」がこれらの患者さんの呼吸器疾患の主な発症機序であるとの仮説が立てられており、制御を失ったBTK依存性肺マクロファージシグナルがこのサイトカインストームに作用し、新型コロナウイルス性肺炎に関与していることを示唆するエビデンスが報告されています2-7

アストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselgaは次のように述べています。「新型コロナウイルス感染症の重症患者さんに対するアカラブルチニブ使用の検討を支持するサイエンスは強固です。本症例集積の有望な予備データにより、CALAVIプログラムに代表される複数の国際第II相試験の開始に至りました。我々は可及的速やかにこれらの試験の患者登録を完了してデータを取得できるのを心待ちにしており、治療薬候補として患者さんにどのような貢献ができるのか、さらに理解を深めたいと思います」。

アカラブルチニブは、特定の血液悪性腫瘍の治療薬として現在米国で承認されている次世代選択的BTK阻害剤です8-10。現在、アカラブルチニブがSARS-CoV-2関連疾患の治療薬として承認されている国はありません。

※アカラブルチニブは本邦未承認です。

以上

*****

CALAVIプログラムについて
CALAVIプログラムは、新型コロナウイルス性呼吸器疾患の入院患者さんを対象にした2つの大規模な多施設無作為化非盲検国際共同試験で構成されており、ベストサポーティブケア単独療法と比較して、ベストサポーティブケアにアカラブルチニブを併用した場合の有効性および安全性を評価します。これらの試験の対象は人工呼吸器を使用していない入院患者さんであり、既存のベストサポーティブケアにアカラブルチニブを追加した併用療法を評価します。これらの試験は世界中で実施されており、米国で1試験、米国外では欧州、日本および南米を含む地域で1試験実施中です。主要有効性評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数です11, 12

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について
コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)が惹起する新しい世界的大流行病です。ほとんどの新型コロナウイルス感染症症例(~80%)では、軽度の呼吸器疾患を呈します13, 14。しかし、主に肺炎を理由に入院が必要となる場合があり、急速に重度急性肺障害や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行する場合には高い死亡率を示します3,15。ウイルス性の高サイトカイン血症や過剰免疫反応は、肺マクロファージや樹状細胞および/または好中球の修飾作用を惹起して、ARDSを発症させる説があります4,7

アカラブルチニブ(Calquence)について
アカラブルチニブは、次世代の選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤です。アカラブルチニブはBTKに共有結合することでその阻害作用を発揮します8-10。B細胞においてBTKシグナルは、B細胞の増殖、輸送、走化、および接着に必要な情報伝達系の活性化を引き起こすことが知られています10
アカラブルチニブは成人慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ性リンパ腫(SLL)の治療薬として米国、オーストラリア、アラブ首長国連邦およびインドにおいて承認されています。カナダではCLLの治療薬として承認されています。また、米国およびその他いくつかの国で、前治療歴のある成人マントル細胞リンパ腫(MCL)の治療薬としても承認されています。本適応症は米国において全奏効率に基づき迅速承認制度のもとで承認されたもので、本適応症の継続承認は検証的試験による臨床効果の検証およびその内容次第で決定されます。
現在、アカラブルチニブがSARS-CoV-2関連疾患の治療薬として承認されている国はありません。

BTK阻害について
肺マクロファージにおいて、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK) はTNFα、IL-6、IL-10、MCP-1など複数のサイトカインおよびケモカインの産生を制御する主要制御因子です。BTK阻害はこれらのサイトカインの産生を抑制するため、新型コロナウイルス性呼吸器合併症を軽減する方法として有望視されています15
制御を失ったBTK依存性マクロファージは、SARSコロナウイルス-2に対する過剰炎症反応における中心的役割をはたし、新型コロナウイルス性肺炎およびARDSにも関与していることが実証されています3-6。マクロファージでは、TLR3、TLR7、およびTLR8はSARSコロナウイルス-2などのウイルスにおける一本鎖RNAを認識し、複数の炎症性サイトカインおよびケモカインの産生を促進するBTK依存性NF-κB・IRF3の活性化を通じてシグナル伝達を開始します4-7。BTK阻害作用助長としての、リンパ系腫瘍患者さんにおけるBTK阻害による治療は炎症性サイトカインおよびケモカインを減少させました。同様の作用はインフルエンザのマウスモデルにおいても観察されており、BTK阻害は炎症メディエーターを減少させ、致死的な急性肺損傷の発生を防ぎました。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器・自己免疫疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca.(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Roschewski M, et al. Inhibition of Bruton tyrosine kinase in patients with severe COVID-19. Sci Immunol. 2020;5(28). DOI: 10.1126/sciimmunol.abd0110.
2. Conti P, et al., Induction of pro-inflammatory cytokines (IL-1 and IL-6) and lung inflammation by Coronavirus-19 (COVI-19 or SARS-CoV-2): anti-inflammatory strategies. J Biol Regul Homeost Agents. 2020;34(2):1. doi: 10.23812/CONTI-E.
3. Channappanavar R, et al. Dysregulated Type I Interferon and Inflammatory Monocyte-Macrophage Responses Cause Lethal Pneumonia in SARS-CoV-Infected Mice. Cell Host Microbe. 2016;19(2):181-193. doi: 10.1016/j.chom.2016.01.007.
4. Huang KJ, et al. An Interferon-Gamma-Related Cytokine Storm in SARS Patients. J Med Virol. 2005;75(2):185-94. doi: 10.1002/jmv.20255.
5. Wong CK, et al. Plasma inflammatory cytokines and chemokines in severe acute respiratory syndrome. Clin Exp Immunol. 2004;136(1): 95–103. doi: 10.1111/j.1365-2249.2004.02415.x.
6. Yoshikawa T, et al. Severe Acute Respiratory Syndrome (SARS) Coronavirus-Induced Lung Epithelial Cytokines Exacerbate SARS Pathogenesis by Modulating Intrinsic Functions of Monocyte-Derived Macrophages and Dendritic Cells. J Virol. 2009;83(7): 3039–3048. Published online 12 Nov 2008. doi: 10.1128/JVI.01792-08.
7. Herold S, et al. Influenza Virus-Induced Lung Injury: Pathogenesis and Implications for Treatment. Eur Respir J. 2015;45(5):1463-78. doi: 10.1183/09031936.00186214.
8. Wu J, et al. Acalabrutinib (ACP-196): a selective second-generation BTK inhibitor. J Hematol Oncol. 2016;9(21).
9. Khan Y, et al. Acalabrutinib and its use in treatment of chronic lymphocytic leukemia. Future Oncol. 2019;15(6):579-589.
10. CALQUENCE® (acalabrutinib) [prescribing information]. Wilmington, DE: AstraZeneca Pharmaceuticals LP; 2020.
11. AstraZeneca. Acalabrutinib Study With Best Supportive Care Versus Best Supportive Care in Subjects Hospitalized With COVID-19. (CALAVI). ClinicalTrials.gov. Identifier: NCT04346199. Accessed June 2020.
12. AstraZeneca. Acalabrutinib Study With Best Supportive Care Versus Best Supportive Care in Subjects Hospitalized With COVID-19. (CALAVI US). ClinicalTrials.gov. Identifier: NCT04380688. Accessed June 2020.
13. Huang C, et al. Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China. Lancet. 2020;395:497-506.
14. Wu Z, McGoogan JM. Characteristics of and important lessons from the coronavirus disease 2019 (COVID-19) outbreak in China: summary of a report of 72 314 cases from the Chinese Center for Disease Control and Prevention. JAMA. 2020 Feb 24. doi: 10.1001/jama.2020.2648.
15. Buggy JJ & Elias L. Bruton tyrosine kinase (BTK) and its role in B-cell malignancy. Intl Rev Immunol. 2012;31(2):119-132. doi: 10.3109/08830185.2012.664797.2012.