リムパーザ、BRCA1/2またはATM遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんの画像診断に基づく無増悪生存期間を2倍以上に延長

本資料はアストラゼネカ英国本社が2019年9月30日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

アストラゼネカとMSDのリムパーザ、相同組換え修復関連遺伝子変異を有する患者さんの
病勢進行または死亡のリスクを51%低減

バイオマーカーにより選択された前立腺がん患者さんの標的治療を検討し、
良好な結果が得られた最初の第Ⅲ相試験

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)およびMSD Inc., Kenilworth, N.J., US(北米およびカナダではMerck & Co., Inc.、以下MSD)は、2019年9月30日、相同組換え修復関連遺伝子変異陽性(HRRm)で、新規ホルモン薬(例えば、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド)による前治療中に病勢進行が認められた転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者さん387例を対象とした第Ⅲ相PROfound試験の詳細な結果を発表しました。

本試験は、HRRmを有する患者さんを2つの患者集団に分けて組み入れ解析するよう設計されました。主要な解析対象集団は、BRCA1/2またはATM遺伝子変異を有する患者さんを含めた集団であり、この集団でリムパーザが臨床的ベネフィットを示した場合、副次的な解析対象集団として、HRR関連遺伝子(BRCA1/2ATMCDK12およびその他11のHRR関連遺伝子)変異を有する全患者を含めた集団も対象に検定を用いた解析を実施しました。

その結果、主要評価項目である画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)のリムパーザによる統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長が示されました。BRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子変異を有するmCRPC患者さんのrPFS中央値は、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群で3.6カ月であったのに対し、リムバーザ投与群では7.4カ月に延長しました。リムパーザはこれら患者さんの病勢進行あるいは死亡リスクを66%低減しました(ハザード比0.34に相当)。

本試験では、主要な副次的評価項目である全HRRm患者集団におけるrPFSも達成しました。リムパーザは病勢進行または死亡のリスクを51%低減し(ハザード比0.49に相当)、rPFSの中央値はアビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群の中央値3.5カ月に対し、リムパーザ投与群では中央値5.8カ月でした。

本結果はスペインのバルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次総会プレジデンシャルシンポウムにおいて発表されました。(抄録 #LBA12_PR)

また、本結果により、中間解析の時点で別の主要な副次的評価項目である2つの患者集団における全生存期間(OS)の改善傾向が示されました。この中間解析の時点で、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群で病勢進行が認められた患者さんの81%が病勢進行後にリムパーザをクロスオーバーして投与していたにも関わらず、BRCA1/2遺伝子またはATM遺伝子変異を有するmCRPC患者さんのOSの中央値はアビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群の15.1カ月に対し、リムパーザ投与群では18.5カ月に延長しました。この中間解析の時点で、OSに関する同様の結果が全HRRm患者集団においても認められ、アビラテロン酢酸エステルまたはエンザルタミド投与群ではOSの中央値が14.3カ月に対しリムパーザ投与群では17.5カ月でした(イベント発現割合41%の時点での解析)。

アストラゼネカのオンコロジー研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselgaは次のように述べています。「PROfound試験の結果により、BRCA遺伝子変異陽性のmCRPC患者さんにプレシジョン・メディシンの治療薬として大きなベネフィットを提供するのみならず、リムパーザは、BRCA以外のHRRmを有する腫瘍に対しても有効であることが実証されました。PROfound試験は、本疾患における相同組換え修復に関連する複数の遺伝子全体に関するPARP感受性の概念の正当性を立証し、mCRPCの標的治療の対象となる患者さんを同定するために分子バイオマーカーを用いて良好な結果が得られた最初の第Ⅲ相試験です。私たちはリムパーザをこれら患者さんに1日も早くお届けするべく、世界中の薬事当局と連携を進めています」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynesは次のように述べています。「第Ⅲ相PROfound試験の結果は、MSDとアストラゼネカのがん患者さんへの持続的なコミットメントの証であると言えます。本試験は、難治性疾患として知られている、ホルモン薬による前治療後に病勢が進行したmCRPC患者さんに対して主要評価項目を達成しました。BRCA遺伝子変異以外の遺伝子変異を有する患者さんに見られたベネフィットは前立腺がんにおける遺伝子検査の潜在的価値を明確に示すものです」。

PROfound試験の治験責任医師の一人でノースウェスタン大学 Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Centerの副所長である Maha Hussainは次のように述べています。「我々医師は、mCRPCの治療の進展を過去15年間見てきました。しかし、これまでの治療は、どの患者でも同じ「画一的」なアプローチであり、腫瘍のゲノム構成やそこから判断できるより効果的な個別化治療の選択や治療効果への影響に気づいていませんでした。私は、PROfound試験の結果と、進行疾患を有すこの患者集団に分子標的治療の可能性を提供するリムパーザの臨床的に意味のあるベネフィットに感動しています。今回の結果を受け、mCRPCの治療においても個別化治療およびプレシジョン・メディシンの新たな時代に進んだと確信しています」。

PROfound試験のリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは以前の臨床試験で認められたプロファイルと一貫するものでした。発現率が20%以上の有害事象は貧血(47%)、悪心(41%)、疲労/無力(41%)、食欲減退(30%)、および下痢(21%)でした。CTCAEグレード3以上の有害事象は、貧血(22%)、肺塞栓(4%)、疲労/無力症(3%)、嘔吐(2%)、呼吸困難(2%)、尿路感染(2%)、食欲減退(1%)、下痢(1%)および背部痛(1%)でした。リムパーザ投与群の患者さんの16%が有害事象により投与を中止しました。

アストラゼネカとMSDはリムパーザをアビラテロン酢酸エステルとの併用療法でmCRPCの1次治療として評価するために実施中の第Ⅲ相PROpel試験など、前立腺がんに関する臨床試験を今後も実施していく予定です。

※転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するリムパーザの適応は未承認です。

以上

                                                                                             

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PROfound試験について
PROfound試験は前向き多施設共同無作為化非盲検の第Ⅲ相試験で、新規ホルモン薬による前治療に対して病勢進行し、BRCA1/2、ATM、CDK12などの相同組換え修復(HRR)に関連する15の遺伝子のうちのいずれかに変異が認められるmCRPC患者さんを対象にリムパーザの有効性と安全性を評価する試験です。

転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)について
前立腺がんは男性において2番目に罹患率が高いがんであり、2018年には世界中で推定130万人が新たに診断され、高い死亡率を伴います1。前立腺がんの発症は多くの場合、テストステロンを含むアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンにより促進されます2。男性ホルモンの作用を阻止するアンドロゲン除去療法を行ったにもかかわらず、前立腺がんが増殖し、他の部位に転移した場合、mCRPCと診断されます2。進行前立腺がん患者さんの約10-20%は5年以内で去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へと進行し、そのうち84%以上の患者さんはCPRC診断時に転移を有しています3。また、CRPC診断時に転移のない患者さんであっても、そのうちの33%が2年以内に転移が発現します3。mCRPCに対する治療選択肢は増えてきていますが、依然として5年生存率は低いままです3

HRR(相同組換え修復)遺伝子変異について
HRRは二本鎖切断および鎖間架橋の形で損傷したDNAを高い精度でかつ誤りのない修復を可能にするDNA修復プロセスです4,5。DNAの損傷を正確に修復できない場合、ゲノムの不安定性につながり、がんの発症原因になります5。HRRの欠損は損傷したDNAを修復する能力の低下につながり、リムパーザなどのPARP阻害剤の標的となるがん細胞の特徴です。PARP阻害剤はDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞死を誘導します4

リムパーザについて
リムパーザ(オラパリブ)は、ファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞/腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害はDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性のがん腫に対して開発が進行中です。

リムパーザは、現在EU内の国を含む64カ国で、BRCA遺伝子変異の有無にかかわらず「プラチナ製剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」の適応症で承認されています。また、米国、EU、日本、およびその他数か国において、「プラチナ製剤ベースの化学療法で奏効が維持されているBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣癌における初回維持療法」の適応症で承認を受けています。さらに、米国、日本を含む43カ国では、「化学療法後の生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳癌」の適応症で承認を受けており、EUではこの適応に加えて「化学療法後のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の局所進行性乳癌」の適応症でも承認を受けています。その他の国においても、卵巣がん、乳がん、膵がんに対する適応症について、規制当局による審査が進行中です。

アストラゼネカおよびMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、進行卵巣がん、転移性乳がんの適応症で承認を受け、世界中で2万5千人以上の患者さんに使われています。また、リムパーザに対しては、PARP阻害剤のなかでも幅広く最も進んだ臨床試験開発プログラムが行われています。アストラゼネカとMSDは協業して、リムパーザが様々ながんのタイプにわたり、単独療法および併用療法で、複数のPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明しようとしています。アストラゼネカにとってリムパーザは、がん細胞のDDRメカニズムを標的とする潜在的新薬における業界トップのポートフォリオの基盤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMSD Inc., Kenilworth, N.J., US(北米およびカナダではMerck & Co., Inc.)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブの複数のがんの種類における共同開発・製品化に関するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は共同で、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として開発します。また、単独で、各社は各々のPD-L1およびPD-1医薬品との併用療法としてリムパーザおよびセルメチニブを開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、急速に拡大しつつある患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保持しています。2014年から2020年までの期間に発売を予定する少なくとも6つの新薬、および低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当てたオンコロジーをアストラゼネカの4つの成長基盤のひとつとして進展させることに注力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略の具体化を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子と耐性、DDRおよび抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Bray, F., Ferlay, et al. (2018). Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians, 68(6), pp.394-424.
2. Cancer.Net. (2019). Treatment of metastatic castration-resistant prostate cancer.
https://www.cancer.net/research-and-advocacy/asco-care-and-treatment-recommendations-patients/treatment-metastatic-castration-resistant-prostate-cancer [Accessed September 2019].
3. Cancer.Net. (2019). Prostate Cancer - Statistics. Available at: www.cancer.net/cancer-types/prostate-cancer/statistics [Accessed September 2019].
4. Li, X. and Heyer, W. (2008). Homologous recombination in DNA repair and DNA damage tolerance. Cell Research, 18(1), pp.99-113.
5. Ledermann, J., Drew, Y. and Kristeleit, R. (2016). Homologous recombination deficiency and ovarian cancer. European Journal of Cancer, 60, pp.49-58.