セルメチニブ、米国食品医薬品局(FDA)により、神経線維腫症I型における希少疾病用医薬品指定を付与

本資料はアストラゼネカ英国本社が2018年2月15日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。


アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)とメルク・アンド・カンパニー(本社:米国ニュージャージー、以下「メルク(北米以外ではMSD)」)は、2018年2月15日、米国食品医薬品局 (FDA) がMEK 1/2阻害剤であるセルメチニブに対し神経線維腫症 I型(NF1) 治療薬として希少疾病用医薬品指定(ODD)を付与したことを発表しました。

NF1は、皮膚、神経系および骨に現れる病変を含む非常に多様な症状を呈する新生児3,000人中1人が発症する不治の遺伝子疾患です1。NF1は学習障害、視覚障害、疼痛、脊柱の変形、捻転および湾曲、高血圧およびてんかん等の二次性合併症を引き起こす可能性があります。叢状神経線維腫(PNs)はNF1の神経系に生じる病変であり、神経に沿って増殖する傾向のある神経束から派生します。PNsはNF1患者さんの約20-25%に発現し、疼痛、運動機能障害および変形の発症の原因となります2

アストラゼネカのグローバル医薬品開発担当エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフメディカルオフィサーであるSean Bohenは次のように述べました。「神経線維腫症I型は生命を脅かす合併症を伴う可能性のある過酷な疾患です。神経線維腫症には既知の治療法はなく症状を管理する治療選択肢も限られています」。

MSDリサーチラボラトリーズのシニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発の責任者兼チーフメディカルオフィサーであるRoy Baynesは次のように述べました。「当社は、セルメチニブを開発し、同剤がNF1患者さんに対する効果を発揮する可能性のあるメカニズムを解明するためにアストラゼネカのチームと協力することを楽しみにしています」。

NF1に対するセルメチニブの潜在的な効果は、米国がん研究所主導でNF1に関連するPNsの症状を有する小児患者さんを対象に実施されている第I/II相SPRINT試験により探求されています。第II相試験の結果は2018年後半を予定しています。

FDAのODDプログラムにより、米国における患者数が20万人未満の希少疾病もしくは障害の安全かつ効果的な治療、診断あるいは予防を目的とすると定義される医薬品が希少疾病用医薬品に指定されます。

NF1に加え、セルメチニブは手術および放射性ヨード治療後の分化型甲状腺がん(DTC)の患者さんを対象とする第III相ASTRA試験においても開発が行われています。セルメチニブは2016年に米国FDAによりステージIII/IV DTCの術後治療としてODDが付与されました。また、同剤は第I相試験において単剤療法および他の治療薬との併用療法の開発が行われています。

 

以上

*****

神経線維腫症 I型(NF1)について
NF1はNF1遺伝子の自発的あるいは遺伝的変異により発症します。本疾患は皮膚上下の柔らかい塊(皮下神経線維腫)、皮膚色素沈着(カフェ・オ・レ斑)および患者さんの20-25%にみられる神経鞘の腫瘍(叢状神経線維腫)を含む多くの症状を伴います。これらの叢状神経線維腫は、疼痛、運動機能障害および変形などの病的状態を引き起こす可能性があります。NF1患者さんは、学習障害、視覚障害、脊柱の捻転および湾曲、高血圧およびてんかん等の多くの他の合併症を発症する可能性もあります。また、NF1患者さんは、悪性脳腫瘍および末梢神経腫瘍、および白血病を含む他のがんを発症するリスクが増加しています。症状は様々な重症度において幼少期に始まり、平均余命を最長15年短縮する可能性があります3

セルメチニブについて
セルメチニブは2003年にArray BioPharma Inc.からアストラゼネカに導出された開発中のMEK 1/2阻害剤です。

NF1遺伝子は、RAS/MAPK情報伝達経路を負に制御するニューロフィブロミンと呼ばれるタンパクを生成するよう指示を出し、細胞の増殖、分化および生存に寄与します。NF1遺伝子の変異は、結果としてRAS / RAF / MEK / ERKのシグナル伝達が制御不能となる可能性があり、それにより細胞が無秩序な形で増殖、分裂、および自身を複製する可能性があり、その結果腫瘍増殖を引き起こすと考えられています。セルメチニブはこの情報伝達経路におけるMEK酵素を阻害することで、腫瘍の増殖を抑制できる可能性があります。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、アストラゼネカとメルク・アンド・カンパニー(本社:米国ニュージャージー州ケニルワース、北米以外ではMSD)は、アストラゼネカの世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブの複数のがん種における共同開発・商業化に関するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。本提携は、PARPとMEK阻害剤は一連のがん種においてPD-L1/PD-1阻害剤と併用することが可能であることを示す増加しつつあるエビデンスに基づくものです。両社はリムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。また、単独で、各社は各々のPD-L1およびPD-1薬との併用でリムパーザおよびセルメチニブを開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカはオンコロジー領域において長い歴史と深い経験を有しており、急速に拡大しつつある患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保持しています。2014年から2020年までの期間に発売を予定する少なくとも6つの新薬、および低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当てたNew Oncologyをアストラゼネカの5つの成長基盤のひとつとして進展させることに注力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、AcertaPharma 社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子と耐性、DNA 損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。また、炎症、感染症およびニューロサイエンスの領域においても、他社との提携を通じて積極的に活動しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

 

参考文献

1  Ghalayani P, et al. Neurofibromatosis Type I (von Recklinghausen's Disease): A Family Case Report and Literature Review. Dent Res J. 2012;9(4): 483–488.

2  Dombi E, et al. Activity of Selumetinib in Neurofibromatosis Type 1–Related Plexiform Neurofibromas. N Engl J Med. 2016; 375:2550-2560.

3  Evans DGR, et al. Reduced Life Expectancy Seen in Hereditary Diseases Which Predispose to Early-Onset Tumors. Appl Clin Genet. 2013; 6:53–61.