アストラゼネカのタグリッソ®(オシメルチニブ) 、EGFR T790M変異陽性転移非小細胞肺がん治療薬として国内における製造販売承認を取得

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ガブリエル・ベルチ、以下、アストラゼネカ)は、本日、「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に抵抗性のEGFR T790M 変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌(NSCLC)」を効果・効能とした「タグリッソ®40mgおよび80mg錠」(一般名:オシメルチニブメシル酸塩、以下、「タグリッソ®」)の国内における製造販売承認を取得しましたことをお知らせいたします。タグリッソ®は、T790M遺伝子変異に特化し開発された世界初の抗がん剤です。

【T790M遺伝子変異とEGFR-TKI薬剤耐性の課題】
EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに有効な既存のEGFR-TKIは、多くの場合、治療開始から1~1年半ほどで薬剤耐性が生じ、病勢が進行します。病勢進行したEGFR-TKI薬剤耐性の患者さんの60%はT790M遺伝子変異を有していますが1、T790M遺伝子変異に特化して開発された薬剤はこれまでありませんでした。このため、二次治療は化学療法とEGFR-TKIの再投与に限定され2,3、患者さんの予後や治療の結果は満足できるものではありませんでした。有効な治療手段を緊急に必要とする患者さんの深刻な状況を鑑み、2015年7月には、日本肺癌学会と患者団体がタグリッソ®の早期承認を求める要望書を提出していました4

【タグリッソ®について】
タグリッソ®は、アストラゼネカが開発した1日1回投与の新規経口分子標的治療薬です。既存のEGFR-TKIとは異なる新規の作用機序を有しており5、EGFR-TKI治療耐性に関連するT790M遺伝子変異陽性EGFRチロシンキナーゼを不可逆的に阻害することから、EGFR-TKI薬剤耐性獲得患者さんの新たな治療選択肢となることが期待されます。また、本剤は、野生型EGFRチロシンキナーゼに対する阻害作用が少なく、従来のEGFR-TKIにみられる下痢や皮膚症状等の副作用発現が軽減する可能性も考えられています。

本剤は、その審査過程において、米国食品医薬品局(FDA)からはBreakthrough Therapy(画期的治療薬)指定を、欧州医薬品評価委員会(CHMP)からは迅速審査の指定を受けており、いずれも第一相臨床試験開始後、短期間で製造販売承認を取得しています。本邦においては、2015年8月の製造販売承認申請後、優先審査品目の指定を経て、およそ7カ月で製造販売承認を取得しました。

【タグリッソ®の有効性と安全性】
本邦におけるタグリッソ®の製造販売承認は、EGFR-TKIによる治療中あるいは治療後に病勢が進行しEGFR T790M変異陽性と診断された NSCLC 患者さんにおける有効性を示した2本の第II相試験 (AURA延長試験およびAURA2試験)のデータに基づいています6

全客観的奏効率 (ORR: 腫瘍縮小効果) はAURA延長試験(199例)において61.3%  (95%信頼区間:54.2%~68.1%)、およびAURA2試験(199例)において70.9% (95%信頼区間:64.0%~77.1%)でした(2015年5月1日時点のデータに基づく)。

2本の第II相試験の併合成績における治験担当医によって評価された代表的な副作用は、安全性評価対象例411例において、発疹・ざ瘡等(37.7%)、下痢(36.5.%)、皮膚乾燥・湿疹等(28.5%)、爪の障害(爪周炎を含む) (23.4%) 等でした。日本人患者さん80例における間質性肺疾患 (ILD) のすべてのグレードにおける発現率は、6.3%でした(2015年5月1日時点のデータに基づく)。

警告または使用上の注意にはILD、QT間隔延長、肝機能障害および血液学的検査異常が含まれます。

アストラゼネカは、厚生労働省と合意した医薬品リスク管理計画書(RMP)に基づき本剤投与患者さんの安全を管理していきます。

【アストラゼネカ研究開発本部長コメント】
アストラゼネカ研究開発本部長の谷口忠明はこの度の製造販売承認について、次のように述べています。「タグリッソ®の早期承認取得を通じて、T790M変異陽性非小細胞性肺がん患者さんに新たな治療選択肢を提供できることを、心より嬉しく思います。日本を含めた第1相臨床試験開始から3年という過去にはないスピードで本剤は承認されました。治験に参加いただいた多くの日本人肺がん患者さんとご協力いただいた治験施設関係者の方々に、深く御礼申し上げます。弊社は、本剤の提供を早急に開始し、患者さんの緊急の要望にお応えすべく、今後も全力で取り組んでいく所存です」。

【国際臨床試験統括医師コメント】
AURA2国際臨床試験の統括医師であり、近畿大学医学部外科学講座呼吸器外科部門教授の光冨徹哉先生は、次のように述べています。「日本人の肺がん患者さんの多くはEGFR遺伝子変異を有しており、EGFR-TKIによる初回治療後、60%に及ぶ患者さんがT790M薬剤耐性変異を獲得すると言われています。タグリッソ®は、T790M薬剤耐性変異獲得後の病勢進行メカニズムへ確実に作用するよう設計されており、国際共同治験によって、その高い効果と安全性が確認されました。同剤が、T790M薬剤耐性変異を有する患者さんの人生を支え、患者さんが肺がんとの闘いをあきらめることなく、より長く価値ある生活を送られることを期待しています」。

【タグリッソ®薬価収載前の無償提供】
アストラゼネカは、治療選択肢が極めて限られているT790M耐性変異の患者さんの緊急の要望に一日も早くお応えするために、厚生労働省の定める「保険外併用療養費制度」のもとで、本剤の無償提供を実施いたします。
本剤の提供は、適正使用を徹底するため、無償供給を希望される本剤開発治験実施施設のうち、承認された適応、用法・用量に従ってのみ使用すること、また弊社が実施する市販直後調査・全例調査や適正使用推進等の各種安全対策にご協力いただくことに合意いただけた施設に限定して実施します。また、本剤提供は製造販売承認取得日以降、各施設での準備が整った時点から開始し薬価収載前日に終了します。なお、本剤の無償提供は公正競争規約の観点からも問題ないことを確認しております。

アストラゼネカは、今後も、患者さんの緊急のご要望を満たす薬剤を一日も早く提供する努力を続けるとともに、薬剤の適正使用の促進と安全管理にも力を注いでまいります。
2016.03.28.01
2016.03.28.02

国内のEGFR T790M 変異陽性NSCLC患者さんとT790M薬剤耐性について
肺がんは多くの場合、診断時には既に進行または転移が認められる、予後の悪いがんです7。日本における肺がん罹患数は約13万人(2015年予測)8、死亡者数は年間約7万人8 に上ります。このうち、非小細胞肺がん(NSCLC)は全肺がんの80~85%9を占め、さらに、EGFR遺伝子変異陽性のNSCLC患者さんは30~40%10に上ると推定されています。
EGFR遺伝子変異陽性のNSCLCには、既存のEGFR-TKIが有効な治療手段です。しかし、多くの患者さんは治療開始1~1年半ほどでEGFR-TKIに対する耐性が生じ、病勢が進行してしまいます。これまでの研究から、EGFR-TKIに耐性が生じた患者さんの約60%1において、EGFR T790M耐性変異という遺伝子変異が生じていることが明らかになっています。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、急速に拡大しつつある患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保持しています。2014年から2020年までの期間に発売を予定する最低6つの新薬および低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、New Oncologyをアストラゼネカの6つの成長基盤のひとつとして進展させることに注力しています。中核的な能力に加え、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるように、当社は戦略を加速する革新的な提携および投資を積極的に追求していきます。がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子と耐性、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤の力を強化し、個別化された併用療法の開発を支持することで、がん治療のパラダイムを再定義し将来的にはがんによる死亡をなくすことがアストラゼネカのビジョンです。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、イノベーション志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主に循環器、代謝、呼吸器、炎症、自己免疫、オンコロジー、感染症およびニューロサイエンスの領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.comをご覧ください。

1 Yu HA. et al. Analysis of tumor specimens at the time of acquired resistance to EGFR-TKI therapy in 155 patients with EGFR-mutant lung cancers. Clin. Cancer Res. 2013; 19(8), 2240-7.
2 Masuda, T., et al.:Clin. Transl. Oncol., 17(9), 702, 2015
3 Sun, JM., et al.:Lung Cancer, 82(2), 294, 2013
4 日本肺癌学会ウェブサイト (2016年3月22日アクセス時)https://www.haigan.gr.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=94
5 Cross DA, et al. AZD9291, an irreversible EGFR TKI, overcomes T790M-mediated resistance to EGFR inhibitors in lung cancer. Cancer Discov. 2014;4:1046-61.
6 Yang JC, et al. AZD9291 in pre-treated T790M positive advanced NSCLC: AURA study Phase II extension cohort. Presented at 16th World Conference on Lung Cancer. 2015
7 Herbst RS,et al. Lung cancer. N Engl J Med. 2008; 359:1367-80.
8 国立がん研究センターがん対策情報センター、がん情報サービス「がん登録・統計」(2016年3月22日アクセス時点)http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
9 国立がん研究センター がん対策情報センター、「がん診療連携拠点病院院内がん登録(2013年全国集計 報告書)」
10 Ellison G, et al. EGFR mutation testing in lung cancer: a review of available methods and their use for analysis of tumour tissue and cytology samples. J Clin Pathol. 2013;66:79-89.