アストラゼネカ、創薬基盤全体のゲノム編集にCRISPR技術を応用する4件の共同研究を発表

本資料はアストラゼネカ英国本社が2015年1月29日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。


アストラゼネカは、先駆的なゲノム編集技術であるCRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats:クリスパー)を、同社の重点治療領域の創薬基盤全体において強化することを目的とする、英国・米国での4つの共同研究を2015年1月29日発表しました。本技術によりアストラゼネカはヒト疾患に近似する前臨床モデルにおいて新薬のターゲットを同定し検証することが可能になります。アストラゼネカは、今回提携した共同研究機関と細胞株および化合物を共有し協働することでCRISPR技術の応用に関する知見を論文化し、本領域における更に幅広い科学的進歩に貢献します。これら共同研究によって、アストラゼネカ社内のCRISPRプログラムは強化され、研究開発における「オープンイノベーション」アプローチがさらに発展します。

今回共同研究で提携した研究所・事業体は、英ケンブリッジのThe Wellcome Trust Sanger Institute、米カリフォルニア州のThe Innovative Genomics Initiative、米マサチューセッツ州のThermo Fisher ScientificおよびBroad Institute/Whitehead Instituteです。

CRISPRはゲノム編集のツールであり、特定遺伝子に対し従来よりもはるかに迅速かつ精確な方法で改変することができます。本技術はDNAの特定部位に対する自動誘導装置である「ガイドRNA」と、DNA切断酵素の“はさみ”である「Cas9 ヌクレアーゼ」という2つの要素から構成されます。細胞の核内で、ガイドRNA配列がCas9 ヌクレアーゼに対し標的DNA配列の2本鎖を切断するよう指示します。細胞自体のDNA修復機構を利用することで、標的遺伝子を削除し、また標的遺伝子へヌクレオチドを挿入すること、あるいは標的遺伝子の転写調節することで、標的遺伝子を改変することができます。ジンクフィンガーヌクレアーゼやTALENsなどの従来のゲノム編集手法とは対照的に、CRISPRは操作がより容易です。

アストラゼネカの革新的新薬・早期開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるDr. Mene Pangalosは次のように述べました。「CRISPRは、疾患の機転に関わる重要な遺伝子の操作や、改変の影響を検証することができるシンプルで強力なツールです。当社研究所の優れたサイエンスと世界的に高名な学究的および業界のパートナーが組み合わさることで、この画期的な技術が当社の研究において活用され、患者さんのために新規治療薬の創薬を加速することができるでしょう」。

今回の新規共同研究に加え、アストラゼネカ社内のプログラムは現在、CRISPR技術を応用して、細胞株ならびに複雑なゲノムや疾患関連シナリオを模倣したトランスレーショナルモデルの生成の効率化及び加速化を進めています。

アストラゼネカの試薬および分析開発担当バイスプレジデントであるDr. Lorenz Mayrは次のように述べました。「CRISPR技術を遺伝子組み換え細胞株や関連する疾患モデルの精緻なゲノム編集に応用することで、新規標的の同定、創薬のためのより良い研究システムの構築、および当社の有効性、安全性モデルのヒトへの外挿性の向上が可能になります」。

 

【提携した共同研究と施設・事業体について】

The Wellcome Trust Sanger Institute(英国、ケンブリッジ)
The Wellcome Trust Sanger Instituteとの共同研究に関する契約に基づき、がん、循環器疾患、代謝疾患、呼吸器疾患、自己免疫・炎症性疾患および再生医療に関連する特定の遺伝子のそれぞれの病態における正確な役割を解明するために、これら遺伝子のノックアウトに特化した研究を行います。アストラゼネカは、特定の遺伝子がスイッチオフされた細胞株を生成するために、Sanger Instituteのコレクションであるゲノムワイド CRISPR ガイドRNAライブラリを用いて標的とすることが可能な細胞株を提供します。その後、遺伝子は次世代シーケンス処理により同定され、細胞株は広範な物理的、生物学的特性に対する特定遺伝子の効果を検証するために検討されます。

Sanger Instituteの教授会のメンバーであるDr. Kosuke Yusaは次のように述べました。「The Sanger InstituteのガイドRNAライブラリによって、研究者は非常に高い特異度をもって遺伝子を標的することができます。CRISPRによって細胞の性質の研究方法が変わりました。これからこの技術を、効果が高い医薬品の開発に応用することで、患者さんにベネフィットを提供できる可能性があります」。


The Innovative Genomics Initiative(米国、カリフォルニア州)

The Innovative Genomics Initiative(IGI)はカリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア大学サンフランシスコ校との合弁事業です。今回の共同研究は、疾患病理における遺伝子の役割を理解するため、遺伝子の阻害(CRISPRi)あるいは活性(CRISPRa) に特化します。 IGIとアストラゼネカは緊密に協働し、がん、循環器疾患、代謝疾患、呼吸器疾患、自己免疫・炎症性疾患および再生医療に関連する標的遺伝子の、それぞれの病態における正確な役割を解明するため、これらの標的遺伝子を同定、検証します。

Innovative Genomics InitiativeのScientific DirectorであるJacob Cornは次のように述べました。「私たちは、CRISPRゲノム編集および調節におけるIGIの一流の専門性と、アストラゼネカの治療薬における豊富な経験が組み合わさることが非常に楽しみです。アストラゼネカの科学者と肩を並べて研究することで、創薬・医薬品開発にプラスの影響を及ぼし、より早く患者さんに治療薬を届けることができると確信しています」。
 

Thermo Fisher Scientific(米国、マサチューセッツ州ウォルサム)
試薬および機器を提供する世界の代表的企業であるThermo Fisher Scientificとの共同研究に関する契約に基づき、アストラゼネカは個別の既知のヒト遺伝子と遺伝子ファミリーを標的とするRNAガイドライブラリの提供を受けます。アストラゼネカは疾患の新規標的を同定する目的で、細胞株に対してRNAガイドをスクリーニングすることが可能になります。

Thermo Fisher ScientificのDirector of Synthetic Biology R&D であるDr. Jon Chesnutは次のように述べました。「このアストラゼネカとの共同研究を通じ、Thermo Fisherは次世代医薬品の創薬に最先端のゲノム編集を応用する方法を促進しています。より多くの疾患モデルを可能にすることで標的の同定および治療薬への応用が改善されることでしょう」。
 

Broad InstituteおよびWhitehead Institute (米国、マサチューセッツ州ケンブリッジ)
Broad InstituteとWhitehead Instituteとの共同研究では、がん治療薬創薬の新たな標的を同定することを視野に入れ、がん細胞株パネルに対してゲノムワイドCRISPRライブラリを評価します。

CRISPR技術について解説する簡潔なビデオを英語、マンダリン語、スペイン語で、こちら(http://www.astrazeneca.com/Media/Broadcast-video?_sm_au_=isV446FsWDr4ktLq)からご覧いただけます。また、本技術を図解した静止画もこちら(http://www.astrazeneca.com/Media/Photo-library)からご覧いただけます。
 

The Wellcome Trust Sanger Instituteについて
The Wellcome Trust Sanger Instituteは世界有数のゲノム研究所です。その大規模な研究を実施する能力によって、同研究所は、医療科学に世界規模の影響と活気を与える、大胆かつ長期的な探索プロジェクトに従事しています。独自の研究プログラムおよび国際コンソーシアにおける指導的役割を通じて生み出された同研究所の研究成果は、ヒトの疾患の新たな診断薬や治療薬の開発に利用されています。http://www.sanger.ac.uk/

Innovative Genomics Initiative(IGI)について
IGI は2014年初頭にカリフォルニア大学バークレー校のthe Li Ka Shing Center for Genomic Engineeringに設立された、カリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア大学サンフランシスコ校の共同研究です。本研究は、変革を起こしうるCRISPRおよびCas9の技術を人類にプラスの影響を与えるよう活用することを目的とし、学究的および商業化を目指す研究コミュニティ双方における世界的な取り組みに影響をあたえ先導するものです。

Thermo Fisher Scientificについて
Thermo Fisher Scientific Inc. は、世界50カ国に5万人の従業員と170億ドルの売上を有する、世界をリードする科学サービス企業です。当社のミッションは私たちの住む世界をより健康で、より清潔な、より安全な場所にすることです。当社はライフサイエンス研究を加速し、複雑な解析問題を解決し、患者さんの診断を改善し、研究所の生産性向上の手助けをしています。当社の4つのプレミアブランドであるThermo Scientific、 Life Technologies、Fisher Scientific、Unity Lab Serviceを通じて、革新的技術と購入の利便性、包括的なサポートを組み合わせてソリューションを提供しています。
詳細はhttp://www.thermofisher.com.をご覧下さい。

About the Broad Institute of Harvard and MITについて
The Eli and Edythe L. Broad Institute of Harvard and MITは当時の創造的な科学者による医療変革を奨励するために2004年に発足しました。The Broad Institute は生命の全分子構成要素とその関係性の解明、主要なヒト疾患の分子ベースの発見、診断薬と治療薬への効果的かつ新たなアプローチの開発、さらに、発見成果やツール、手法、データなどの科学界全体に向けた公開を行います。

マサチューセッツ工科大学 (MIT)とハーバード大学およびその系列病院、そしてロサンゼルスの慈善家Eli & Edythe L. Broadによって創設されたthe Broad Instituteは、MITおよびハーバード大学バイオメディカルリサーチコミュニティの内外の教授や専門スタッフ、学生を擁し、世界40カ国超の100施設を超える民間および公的機関と共同研究を行っています。
詳細はhttp://www.broadinstitute.org.でご覧下さい。

Whitehead Instituteについて
Whitehead Institute は、生物医学の基礎研究を通じて人々の健康増進に専念する世界的に高名な非営利研究機関です。ガバナンス、財務およびリサーチプログラムにおいては完全に独立しながらも、教授陣においてはマサチューセッツ工科大学(MIT)と緊密に連携し、教授陣はMITでの職位も保有しています。http://wi.mit.edu

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、イノベーション志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主に循環器、代謝、呼吸器、炎症、自己免疫、オンコロジー、感染症およびニューロサイエンスの領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。
詳細はhttp://www.astrazeneca.comをご覧ください。