ヘリコバクター・ピロリ除菌療法 OAC3剤併用療法 承認

消化性潰瘍の再発抑制に有効と認められているヘリコバクター・ピロリの除菌療法に対して、オメプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法(OAC3剤併用療法)が、4月11日に承認されました。ヘリコバクター・ピロリ感染の胃潰瘍・十二指腸潰瘍が適応となります。このOAC3剤併用療法は、欧州を中心に実施されたMACH1 study(マックワン スタディ:大規模臨床試験)で高い除菌率と忍容性が確認されたレジメです。

日本人でのOAC3剤併用療法は国内外の臨床試験において検討され、1回当たりオメプラゾール20mg、アモキシシリン1回750mg(力価)、およびクラリスロマイシン400mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間の経口投与で有効な除菌率、忍容性が得られました。

世界のスタンダードとなっているOAC3剤併用療法が日本でも保険適用となったことは、ヘリコバクター・ピロリ陽性で、胃・十二指腸潰瘍の再発を繰り返す患者さんに朗報となるものと期待されます。

本療法で承認され使用できる薬剤一覧は次のとおりです

表1

表2

表3
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表5
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ヘリコバクター・ピロリと除菌療法について

ヘリコバクター・ピロリは、1982年にWarrenとMarshallにより発見されたらせん状のグラム陰性桿菌で、胃の粘液層に生息しています。ヘリコバクター・ピロリが胃粘膜に感染すると、種々の胃粘膜傷害の機序により慢性活動性胃炎を起こすことが明らかにされ、胃・十二指腸疾患との関連も多くの疫学的研究で示されています。

近年、ヘリコバクター・ピロリを除菌することにより、維持療法なしに胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発が抑制されることは世界的にコンセンサスが得られています。本邦においても、2000年6月“ヘリコバクター・ピロリ感染の診断と治療のガイドライン”(日本ヘリコバクター学会)が公表され、「ヘリコバクター・ピロリ陽性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍はすべて除菌治療の適応となる」と提言されました。

除菌療法の研究は1980年代から始まり、抗菌薬や抗原虫薬の単剤あるいは2剤併用、ビスマス製剤と抗菌薬の併用などが試みられましたが、安定した除菌率が得られない、副作用や内服方法が複雑なため内服コンプライアンスが悪いといった欠点がありました。その後、抗菌薬の活性至適pHは中性であることから、オメプラゾールなどの酸分泌抑制剤を併用することにより胃内環境を中性に近づけ、抗菌薬の抗菌活性を増し、除菌率を上げる療法が試みられました。そこでオメプラゾールとアモキシシリンの2剤併用療法が検討され、さらに除菌率を上昇させる療法としてオメプラゾールなどのプロトンポンプ・インヒビター(PPI)をベースに抗菌薬2剤を併用する3剤併用療法へと移行、MACH1 studyでOAC3剤併用療法は除菌率が最も高く、安全性の高い方法であることが確認されました。MACH1 studyは世界のガイドラインにおいて最も信頼されるエビデンスのひとつとして大きな役割を果たすことになりました。日本ヘリコバクター学会の治療ガイドラインでもPPI+アモキシシリン+クラリスロマイシンを1週間投与する3剤併用療法が第一選択となっています。

OAC3剤療法の概要

オメプラゾールは、アストラゼネカ社により開発された抗潰瘍剤で、胃壁細胞内のプロトンポンプを阻害することにより胃酸分泌を抑制する薬剤です。日本では胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群を適応疾患として1991年1月18日に承認され、現在では、オメプラール錠20、同錠10(アストラゼネカ株式会社)、オメプラゾン錠20mg、同錠10mg(三菱ウェルファーマ株式会社)の販売名で発売されています。

アモキシシリンは、ビーチャム社(現 グラクソスミスクライン社)により開発された広範囲の抗菌スペクトラムを持つ経口用ペニシリン系抗菌薬です。1974年9月6日に承認され、現在では、パセトシンカプセルおよび同錠250(協和発酵工業株式会社)、サワシリンカプセルおよび同錠250(昭和薬品化工株式会社-藤沢薬品工業株式会社)、アモキシシリンカプセル「トーワ」(東和薬品株式会社)他の販売名で発売されています。
クラリスロマイシンは、大正製薬株式会社において開発されたマクロライド系抗菌薬です。1991年3月29日に承認され、クラリス錠200(大正製薬株式会社)およびクラリシッド錠200mg(ダイナボット株式会社)の販売名で発売されています。

1.オメプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の承認内容

表2-1
本療法は、胃潰瘍または十二指腸潰瘍で、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われ、除菌前感染診断の結果、陽性となった患者が適応の対象となります。

2.オメプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の臨床試験成績

1)除菌率

(1)国内臨床試験
ヘリコバクター・ピロリ陽性の胃潰瘍または十二指腸潰瘍患者を対象に、ヘリコバクター・ピロリ除菌率及び有害事象を主要評価項目として、オメプラゾール20mg+アモキシシリン750mg+クラリスロマイシン400mgを1日2回、7日間投与する第III相臨床試験を実施しました。
ヘリコバクター・ピロリの検出方法としては、感染診断は迅速ウレアーゼ試験及び培養検査で陽性と判定された場合、ヘリコバクター・ピロリ陽性と判定しました。除菌判定は除菌療法後6週における培養検査、組織学的検査および尿素呼気試験のすべての検査で陰性の場合、ヘリコバクター・ピロリ陰性と判定しました。
その結果、胃潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌率は75.9%、十二指腸潰瘍における除菌率は81.8%であり、全体では78.8%の除菌率を示しました。

表2-2-1

(2)海外臨床試験
オメプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌療法の申請には、国内臨床試験成績だけでなく海外臨床試験成績(MACH1試験、MACH2試験、DU-MACH試験及びGU-MACH試験)も使用しています。
以下の成績は申請に使用した海外の臨床試験成績です。

表2-2-3
(注)海外臨床試験に用いた薬剤投与量は日本で承認された用法・用量と異なります。

2)安全性

(1)国内臨床試験
国内第III相臨床試験において除菌療法との因果関係が否定できないと判定された副作用は除菌療法期(0~1週)~観察期(1~7週)で61.3%で、主なものは軟便(16.4%)、水様便を含む下痢(22.7%)、苦み、酸味を含む味覚異常(20.9%)でした。除菌療法との因果関係が否定できない重篤な副作用は認められず、忍容性に問題がないとされました。

表2-3

表2-4

表2-5