ソフトウェアを用いたEBM実践の新しいアプローチ Breast Cancer Treatment Model

患者や保険が負担する治療の価値はどれくらいか?
また価値に値する治療とは? 治療をうける科学的根拠は何か? このような疑問に医師はどう答えるのか。 医療の質を評価するために開発されたコンピューターModelとはどのようなものか?

「根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine:EBM)」の概念は近年日本においても急速に広まりつつあり、アストラゼネカ株式会社は、このたび日本初の画期的試みとして、EBM実践をサポートするコンピュータソフトウェアを乳癌領域において開発しました。

このソフトウェアはBreast Cancer Treatment Model(BCTM)で、当初アストラゼネカ社が社内の情報基盤の構築のために発足させた開発プロジェクトを、日本では社外の医師、コ・メディカル等の医療従事者や患者などへの提供を目指して発展させたものです。開発にあたってはアストラゼネカ株式会社スタッフがプロジェクトのコーディネートを行い、社外の医療専門家(乳癌専門医、医療経済学専門家)、Ovation Research社(米国)およびDymaxium社(カナダ)等、多くの協力を経ています。

このBreast Cancer Treatment Modelは、本邦における乳癌治療の流れを診断の時点からツリー形式に体系化し、その中に登場する各治療選択肢の、(1)実際の施行率、(2)治療におけるエビデンス(有効性ならびにそのエビデンスレベル)、(3)治療に要するコスト、等のEBMに基づいた治療上の意志決定に必要な情報を総括したデータベースです。さらに、完成版では費用対効果の分析や、その治療法を選択した場合の生涯にわたる乳癌治療費が推測できることを目指して、現在、開発作業を進めています。データの収集にあたっては、(1)治療実態については、約1,300症例を対象とした国内治療実態調査結果および複数の乳癌治療医のエキスパートオピニオンが用いられました。また、(2)治療におけるエビデンスについては、過去20年間の国内外の臨床文献をMEDLINE、EMBASE、JMEDICINE等にて検索し、乳癌領域におけるEBMのエキスパートによって米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology; ASCO)の基準を用いてエビデンスレベルの評価が行われました。さらに、(3)治療コストについては、治療自身にかかる費用だけでなく、有害事象処置やモニタリング等の付随する費用との総和が用いられました。

このような医療経済学の視点を取り入れた治療モデルは国内では初めての試みと考えられ、現在の医療においてEBM導入の声が高まる中、このEBM実践のサポートツールとして期待が持たれています。

このモデルは初版として来年前半には全国の乳癌治療専門医にCD-ROMの形で配布される予定で、現在そのための準備作業を進めています。

なお、このBreast Cancer Treatment Modelは、2000年10月22-24日仙台で開催された第38回日本癌治療学会総会2日目のランチョンセミナー(司会:国立がんセンター中央病院内科医長 渡辺 亨、共催:アストラゼネカ株式会社)にて発表されました。