ホルモン療法が閉経前乳癌の患者において標準的化学療法と同等の有効性を証明

-ゾラデックス単独療法と標準的化学療法(CMF)の比較試験において同等の無病生存期間*が報告

News release for the attention of health, science and news correspondents
Location: 2nd European Breast Cancer Conference, Brussels より

9月26日~30日にベルギーブリュッセルで開催されている第2回ヨーロッパ乳癌学会にて、閉経前乳癌の術後補助療法においてLH-RHアゴニスト「ゾラデックスィ 」(一般名:酢酸ゴセレリン)の単独療法が標準的化学療法と有効性が同等であることが発表された。
海外大規模試験のZEBRA Trial**の成績によると、ゾラデックス単独によるホルモン療法が、ホルモン感受性のあるリンパ節転移陽性の 閉経前乳癌の術後補助療法に対し、標準的化学療法***と同等の有効性を有することが明らかになった。これらの閉経前乳癌の術後補助療法に対する標準的治療法として現在、化学療法が一般的に行われているが、ゾラデックスによるホルモン療法は化学療法とは全く違った機序でその効果を発揮する。

化学療法は、腫瘍に対して直接的な殺細胞作用をもつが、ゾラデックスは、腫瘍細胞の増殖を促進するエストロゲンの産生を抑制する作用をもつ。
ゾラデックスはこの化学療法とは異なる作用機序により化学療法と同等の臨床効果をもたらし、かつ、化学療法でみられる脱毛、重度の悪心・嘔吐、生命に関わる感染症などの強い副作用を回避する。

ZEBRA Trialはホルモン療法と標準的化学療法を比較する過去最大規模の臨床試験である。 本試験の対象は1,640例の閉経前乳癌患者で、2年間のゾラデックス単独療法(症例数:817例)または6ケ月の標準的化学療法(症例数:823例)のいずれかに無作為に割り付けられた。

試験対象患者のうちホルモン感受性のある患者(全体の73%)において、ゾラデックス単独投与により、化学療法群と同等の無病生存期間(disease-free survival)が得られた。
また、ゾラデックスで治療を受けた患者群では、化学療法群でみられる強い副作用が認められなかった。
化学療法による典型的な副作用である脱毛、悪心・嘔吐(化学療法群で97%以上の患者に制吐 剤を使用したにもかかわらず発現)、感染症などはすべてゾラデックス群に比べ、化学療法群で発現頻度が大きく上回った。

表1
また、ゾラデックス群、化学療法群のいずれの治療群においても、膣乾燥感、ほてりなどの更年期様症状が認められた。投与開始初期にはゾラデックス群は化学療法群よりその発現率は高かったものの治療終了後には化学療法群を下回るまで改善された。

表2

試験グループを代表して発表したキール大学産婦人科のウォルター・ ヨナ教授は、「進行再発乳癌に対するゾラデックスの有効性はすでに確立されている。ZEBRA Trialではこれらの有効性が術後補助療法でも認められるかどうか、また、ゾラデックスが化学療法と同等の有効性を有するのかどうかを明らかにするために行われた。」とコメントし、さらに「喜ばしいことに、我々の試験成績から、ゾラデックスはホルモン感受性のある閉経前乳癌の術後補助療法に対して化学療法と同等の有効性を有すると結論できる。」と続けた。
また、「これは、医師と患者が術後の治療法の新たな選択肢を手にしたことを意味する。化学療法は多くの患者に有効であるが、脱毛、持続する苦しい悪心・嘔吐など、よく知られる多くの強い副作用があり、これらに耐えることの出来ない患者がたくさんいるのである。」と述べている。

注:
*ある治療を受け、一応は治癒して再発(再燃)がなく、健常者と同様な日常生活を送っていること。
**ZEBRA:"Zoladex" in Early Breast Cancer Research Association Trial
***ZEBRA試験における標準的化学療法はシクロホスファミド/メトトレキサート/5-FU(CMF療法)であった。
文中の医薬品「ゾラデックス」は、日本においては、前立腺癌の適応で1991年に、閉経前乳癌の適応では 1994年に発売されています。

補足説明:

  • 第2回ヨーロッパ乳癌学会: 2nd European Breast Cancer Conference
  •  本試験における「ホルモン感受性」とは「エストロゲン受容体(ER)陽性」を意味する。
  •  「エストロゲン受容体(ER)陰性」患者においては、従来通り化学療法が術後療法の選択肢である。
  • エストロゲン受容体(ER)陽性乳癌では、腫瘍細胞の増殖にエストロゲンが関与している。閉経前女性において、エストロゲンは脳下垂体で産生される卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)などの刺激を受けて卵巣から産生される。
  • ゾラデックスなどの「黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト」は、脳下垂体におけるホルモン産生細胞のLHRH受容体に結合し、LHの産生を阻害する。
  • ゾラデックスによる脳下垂体からのLH産生抑制により卵巣からのエストロゲン産生が抑制される。その結果、血中エストロゲン値は、閉経後女性と同等のレベルにまで低下する。これにより、エストロゲン受容体(ER)陽性の腫瘍が、増殖
  • 分裂に必要なエストロゲンに対して“飢えた”状態となる。
  •  ZEBRA Trialには50歳以下の1,640名の閉経前女性(ステージII リンパ節転移陽性乳癌患者)が参加。これは、初回術後(±放射線治療)におけるLHRHアゴニストによるエストロゲン抑制によるベネフィットを直接、標準的化学療法と比較した最初の試験である。 対象患者はゴセレリン3.6mg /4週×2年間、またはCMF療法 4週×6サイクル、のいずれかを投与された。
  • ZEBRA Trialは、閉経前乳癌の術後補助療法に対するゴセレリンの役割を明らかにする為のより大規模な6試験(現在までに8,500名が登録されている)のひとつである。