アストラゼネカのリムパーザ、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者さんに対する術後薬物療法として、米国で承認取得

本資料はアストラゼネカ英国本社が2022年3月11日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

BRCA遺伝子変異陽性の早期乳がんに対する治療薬として初めての承認取得
リムパーザが早期乳がんにおける全生存期間延長を示す最新データ

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米およびカナダ以外ではMSD)は、リムパーザ®(一般名:オラパリブ、以下、リムパーザ)が、術前または術後のいずれかに化学療法を受けた生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)かつヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の高リスク早期乳がん患者さんの術後薬物療法として、米国で承認されたと発表しました。

米国食品医薬品局(FDA)による承認は、2021年米国臨床腫瘍学会年次総会で発表され、The New England Journal of Medicine誌1に発表された第Ⅲ相OlympiA試験の結果に基づいています。

本試験において、リムパーザは、プラセボと比較して無浸潤疾患生存期間(iDFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示しました。具体的には、浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを42%低下させました(ハザード比[HR]0.58;95%信頼区間[CI]0.46-0.74; p値<0.0001)。

また、OlympiA試験の最新データによると、リムパーザは、プラセボとの比較で主要な副次評価項目である全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、死亡リスクを32%低下させました(ハザード比0.68; 95% 信頼区間 0.50-0.91; p値=0.0091)。この試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、過去の臨床試験のプロファイルと一致していました。全生存期間のデータは、2022年3月16日に行われた欧州臨床腫瘍学会のバーチャルプレナリーで発表されました。

乳がんは世界中で最も多く診断されているがんであり、2020年に診断された患者さんは推定230万人です2。米国では、全乳がん患者さんの91%近くが早期段階で診断され、BRCA遺伝子変異を有する患者さんは約5~10%です3,4

OlympiA試験運営委員会の委員長であり、Oncology at The Institute of Cancer Research, London and Kings College Londonの教授であるAndrew Tutt氏は次のように述べています。「本日のリムパーザ承認は、特定の遺伝子型を有する乳がん患者さんにとってすばらしい知らせです。乳がんの多くは早期に診断され、多くの患者さんの転帰は良好ですが、診断時に高リスクと診断された患者さんは、がんの再発リスクが依然高く、新たな治療選択肢が必要です。OlympiA試験により、BRCA1/2遺伝子変異陽性の高リスク乳がん患者さんに対して、再発リスクを低下させ生存率を改善するリムパーザという新たな治療選択肢が示されました」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者Dave Fredricksonは次のように述べています。「この承認は、BRCA遺伝子変異のある米国の早期乳がん患者さんに、術後薬物療法としての新たな標的治療の選択肢を与えるものです。リムパーザは、高リスク患者さんの再発リスクを低下させ、また、新たなデータによれば、プラセボと比較して患者さんの生存期間の有意な延長も確認されました。このデータは、リムパーザによる治療が適格と思われる患者さんを特定するために、診断後可及的速やかにBRCA遺伝子検査を行うことの重要性を示しています」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント兼グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynes博士は次のように述べています。「今回の承認は、より高い悪性度を呈することが多いBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者さんにとって重要な一歩です。術後薬物療法としてのリムパーザは、プラセボとの比較で、患者さんのがんが再発することなく生存期間を延長する可能性を示しています。OlympiA試験に参加してくださった患者さん、介護者、医療提供者の皆さまに感謝いたします」。

リムパーザは、術前または術後補助化学療法による治療を受け、生殖細胞系列のBRCA遺伝子に病的変異または病的変異疑いがあり、かつHER2陰性ハイリスク早期乳がんの成人患者さんに対する術後薬物治療に適応されます。患者さんは、FDAが承認したリムパーザのコンパニオン診断に基づいてリムパーザの投与可否を判断されます。

リムパーザは、第Ⅲ相OlympiAD試験結果に基づき、化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がん患者さんに対する治療薬として、米国、EU、日本およびその他数カ国で承認されています。

BRCA遺伝子変異陽性乳がんにおける術後薬物療法に対するリムパーザの適応は、本邦では未承認です。

以上

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財務上の考慮事項
リムパーザの米国での承認を受けて、アストラゼネカはMSDからマイルストーンの支払いとして1億7,500万ドルを受領し、2022年第1四半期に共同収益として計上します。

早期乳がんについて
早期乳がんは、局所リンパ節転移の有無にかかわらず乳房に限局し、遠隔転移性疾患がない疾患として定義されます5。米国において、5年生存率は限局性乳がん(乳房領域のみに認められるがん)で99%、局所乳がん(乳房から、隣接する組織やリンパ節に広がったがん)で86%です3

早期乳がん治療の進歩にもかかわらず、高リスクの臨床的および/または病理学的特徴のある患者さんの最大30%が、数年以内に再発します6。また、BRCA変異のある乳がん患者さんは、変異のない患者さんと比較して、通常よりも若年で乳がんと診断される可能性が高くなっています7

乳がんは生物学的に最も多様な腫瘍タイプの1つであり、その発症と進行の背景には、様々な因子が存在します8。乳がんの発症におけるバイオマーカーの発見は、この疾患の科学的な理解に大きな影響を及ぼしています9

OlympiA試験について
OlympiA試験は、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、術後薬物療法として投与したときのリムパーザの有効性および安全性をプラセボと比較検討する、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同第Ⅲ相試験です10

本試験の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)であり、無作為化から最初の局所領域再発、遠隔再発、新規がん発現、または死因を問わない死亡までの期間と定義しています11

第Ⅲ相OlympiA試験は、Breast International Group(BIG)がFrontier Science & Technology Research Foundation(FSTRF)、NRG Oncology、アメリカ国立がん研究所、アストラゼネカ及びMSDと提携し、主導しています。また、本試験は、米国のNRG Oncologyおよび米国以外のアストラゼネカ社から資金提供を受けています12

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2(乳がん感受性遺伝子1/2)は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の安定性維持に重要な役割を果たします11

これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、または正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなるとともに、リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めます11-14

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異など、あるいは他の薬剤(新規ホルモン製剤(NHA)など)により誘発される相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。

リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPと結合し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。

リムパーザは現在、DDR経路に欠陥や依存性があるPARP依存性の腫瘍タイプの治療薬として、多くの国で承認されており、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法を含め、BRCA遺伝子変異陽性および相同組換え欠損症(HRD)陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法として、単剤療法およびベバシズマブとの併用療法が用いられています。さらに、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性転移性乳がん(EUでは局所進行乳がんを含みます)、BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん、およびHRR関連遺伝子変異陽性転移性去勢抵抗性前立腺がん(EUおよび日本ではBRCA遺伝子変異陽性のみ)に対しても承認されています。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、がん細胞のDDRを標的治療とした薬剤であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

なお、本リリースに記載の効能・効果(適応症)については本邦で承認されている記載と異なる場合があります。本邦における承認状況については、こちらをご確認ください。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害薬であるリムパーザおよび、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害薬であるコセルゴ(セルメチニブ)について、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。

両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおける乳がん領域について
アストラゼネカは、乳がんの生物学的な理解が深まってきていることから、より効果的な治療を患者さんに提供するべく、乳がんの分類や治療に対する現在の臨床的パラダイムへの挑戦、再定義を始めており、乳がんによる死亡をなくすことを目標に掲げています。

アストラゼネカは、生物学的に多様な乳がんの腫瘍環境に対応するべく、異なる作用機序の既承認および開発中の有望な化合物からなる包括的なポートフォリオを有しています。

アストラゼネカは、フェソロデックス(フルベストラント)およびゾラデックス(ゴセレリン)、ならびに次世代の経口選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)および新薬候補のcamizestrantによって、HR陽性乳がんの転帰を継続的に変革することを目指しています。

リムパーザは、BRCA遺伝子変異を有する早期または転移性乳がん患者さんに対する標的治療薬です。アストラゼネカとMSDは、BRCA遺伝子変異を有する乳がんの患者さんにおけるリムパーザの研究を継続しています。

悪性度の高い乳がんであるトリプルネガティブ乳がん患者さんに必要な治療選択肢を提供するために、アストラゼネカは免疫療法のイミフィンジ(デュルバルマブ[遺伝子組換え])と、リムパーザおよびエンハーツを含む他のがん治療薬との併用試験を行い、化学療法との併用でAKTキナーゼ阻害薬であるcapivasertibの可能性を評価しています。また、第一三共と共同でTROP2指向性ADCであるdatopotamab deruxtecanの可能性を探索しています。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカは、あらゆる種類のがんに対して治療法を提供するという高い目標を掲げ、がんとその発見にいたるまでの複雑さを科学に基づいて理解し、患者さんの人生を変革する医薬品の開発および提供を通じて、オンコロジー領域の変革をけん引していきます。

アストラゼネカは治療困難ながん種に注力しています。当社は持続的なイノベーションにより、医療活動および患者さんの医療経験を一変させる可能性のある、製薬業界でもっとも多様なポートフォリオと開発パイプラインを構築しています。

アストラゼネカはがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、希少疾患、循環器・腎・代謝疾患、呼吸器・免疫疾患からなるバイオ・医薬品において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.com または、ツイッター @AstraZeneca (英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Tutt ANJ, et al. Adjuvant Olaparib for Patients with BRCA1- or BRCA2-Mutated Breast Cancer. N Engl J Med 2021;384:2394-2405.
2. Sung H, et al. Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians. 2020;0:1-41.
3. American Cancer Society. Breast Cancer Facts & Figures 2019-2020. Available at
https://www.cancer.org/content/dam/cancer-org/research/cancer-facts-and-statistics/breast-cancer-facts-and-figures/breast-cancer-facts-and-figures-2019-2020.pdf. Accessed January 2021.
4. Cancer.gov. Early-stage breast cancer. Available at https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/early-stage-breast-cancer. Accessed January 2021.
5. Union for International Cancer Control. Early-stage breast cancer -2014 Review of Cancer Medicines on the WHO List of Essential Medicines. Available at
https://www.who.int/selection_medicines/committees/expert/20/applications/EarlyStageBreast.pdf?ua=1. Accessed January 2021.
6. Colleoni M, et al. Annual Hazard Rates of Recurrence for Breast Cancer During 24 Years of Follow-Up: Results From the International Breast Cancer Study Group Trials I to V. J Clin Oncol. 2016 Mar 20; 34(9):927-935.
7. O'Shaughnessy J, et al. Prevalence of germline BRCA mutations in HER2-negative metastatic breast cancer: global results from the real-world, observational BREAKOUT study. Breast Cancer Research. 2020;22(114).
8. Yersal O, Barutca S. Biological subtypes of breast cancer: Prognostic and therapeutic implications. World J Clin Oncol. 2014;5(3):412-424.
9. Rivenbark AG, et al. Molecular and Cellular Heterogeneity in Breast Cancer: Challenges for Personalized Medicine. Am J Pathol. 2013;183:1113-1124.
10. ClinicalTrials.gov. Olaparib as Adjuvant Treatment in Patients with Germline BRCA Mutated High Risk HER2 Negative Primary Breast Cancer (OlympiA). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02032823. Accessed January 2021.
11. Roy R, et al. BRCA1 and BRCA2: different roles in a common pathway of genome protection. Nat Rev Cancer. 2016;12(1):68-78.
12. Wu J, et al. The role of BRCA1 in DNA damage response. Protein Cell 2010;1(2):117-123.
13Gorodetska I, et al. BRCA Genes: The Role in Genome Stability, Cancer Stemness and Therapy Resistance. Journal of Cancer. 2019;10:2109-2127.
14. Li H, et al. PARP inhibitor resistance: the underlying mechanisms and clinical implications. Molecular Cancer. 2020;19:1-16.

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