アストラゼネカのリムパーザ、欧州においてBRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として承認取得

本資料はアストラゼネカ英国本社が2020年11月5日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、11月5日、欧州連合(EU)においてリムパーザ®(一般名:オラパリブ、以下、リムパーザ)が、相同組換え修復(HRR)関連遺伝子変異を有する患者集団のうち、乳がん感受性遺伝子1/2(BRCA1/2)変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者さんの治療薬として承認されたことを発表しました。

前立腺がんは男性において世界で2番目に罹患率の高いがんであり、2018年には世界中で推定130万人が新たに前立腺がんと診断されました1。また、mCRPC患者さんの約12%にBRCA遺伝子変異が認められています2

今回の欧州委員会による承認は、第Ⅲ相PROfound試験のサブグループ解析の結果に基づくもので、リムパーザはエンザルタミドまたはアビラテロンと比較して、BRCA1/2遺伝子変異陽性の患者さんにおいて画像診断に基づく無増悪生存期間(rPFS)および全生存期間(OS)の延長を示しました。

リムパーザは、バイオマーカーにより選択された進行性前立腺がんにおいて、欧州で承認された最初かつ唯一のPARP阻害剤です。今回の承認は、2020年9月の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)による承認勧告に従うものです。

第Ⅲ相PROfound試験の治験責任医師の一人であり、ロンドンのThe Institute for Cancer Researchの医薬品開発部門および王立マースデン病院の責任者であるJohann de Bono氏は次のように述べています。「今回のEUでの承認は、前立腺がんにおけるプレシジョン・メディシンの新たな時代の幕を開けとなるものと言えます。これにより、これまで予後が悪く治療選択肢が限られていた進行性前立腺がんの患者さんに対して、分子標的治療薬としてリムパーザを提供することができるようになります」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のDave Fredricksonは次のように述べています。「リムパーザは、BRCA遺伝子変異陽性のmCRPC患者さんにおいて、rPFSを3倍以上延長し、特定の新規ホルモン製剤との比較でOSの延長を示した唯一のPARP阻害剤です。今回の承認は、欧州において、BRCA遺伝子検査が進行性前立腺がん患者さんに対する診断および治療方針決定において重要なステップになることを意味しています」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynesは次のように述べています。「第Ⅲ相PROfound試験は、リムパーザがBRCA1/2遺伝子変異陽性のmCRPC患者さんに対して臨床的に意義のある有効性を提供し、欧州でこれらの患者さんのOSを延長できる重要な選択肢となり得ることを示しました。MSDは、共同開発を行っているアストラゼネカとともに、欧州全域の患者さんができるだけ早くこの標的治療を受けられるようになることを期待しています」。

第Ⅲ相PROfound試験のサブグループ解析では、BRCA1/2遺伝子変異陽性のmCRPC患者さんにおいて、リムパーザ群では病勢進行または死亡のリスクが78%低下し(ハザード比[HR]:0.22、95%信頼区間[CI]:0.15~0.32、名目p<0.0001)、rPFS中央値が比較対象のエンザルタミドまたはアビラテロン群では3.0ヵ月であったのに対し、リムパーザ群では9.8ヵ月に延長しました。また、リムパーザ群では死亡リスクが37%低下し(ハザード比:0.63、95%信頼区間:0.42-0.95)、OS中央値がエンザルタミドまたはアビラテロン群では14.4ヵ月であったのに対し、リムパーザ群では20.1ヵ月に延長しました。

第Ⅲ相PROfound試験の主な結果全生存期間のデータは、今年初めにThe New England Journal of Medicineで発表されました。

今回、欧州におけるリムパーザの承認は、新規ホルモン製剤を含む前治療後に進行が認められた、BRCA1/2遺伝子変異陽性(生殖細胞系列変異および/または体細胞変異)のmCRPC成人患者さんに対する治療を効能・効果として行われました。

リムパーザは、米国においても2020年5月に、第Ⅲ相PROfound試験の結果に基づいてHRR関連遺伝子変異を有するmCRPC患者さんの治療薬として承認されており、現在その他複数の国でも薬事承認審査中です。

アストラゼネカとMSDは、mCRPCの一次治療として、リムパーザとアビラテロンとの併用療法をアビラテロン単剤療法と比較して評価する実施中の第Ⅲ相PROpel試験など、転移性前立腺がんに関する臨床試験を今後も実施していきます。PROpel試験は、2021年後半にデータ解析を予定しています。

※本邦においてmCRPCに対するリムパーザの適応は未承認です。

以上

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転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)について
前立腺がんは高い死亡率を伴うがんです1。前立腺がんの発症は多くの場合、テストステロンを含むアンドロゲンと呼ばれる男性ホルモンにより促進されます3。男性ホルモンの作用を阻害するアンドロゲン除去療法を行ったにもかかわらず、前立腺がんが増殖し、他の部位に転移した場合、mCRPCと診断されます3。進行前立腺がん患者さんの約10~20%は5年以内に去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)へと進行し、そのうち84%以上の患者さんはCRPC診断時に転移を有しています3。また、CRPC診断時に転移のない患者さんであっても、そのうちの33%は2年以内に転移が確認されます4。mCRPCに対する治療選択肢は増えてきていますが、依然として5年生存率は低く、これらの患者さんの治療において生存期間を延長させることが、引き続き主要な治療目標となっています4

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の遺伝的安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されない、または正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなり、リムパーザを含むPARP阻害剤への感受性を高めます5-8

PROfound試験について
PROfound試験は前向きな無作為化非盲検多施設共同第Ⅲ相試験で、新規ホルモン製剤治療薬であるアビラテロンまたはエンザルタミドとの比較において、リムパーザの有効性と安全性を評価する試験です。本試験は、新規ホルモン製剤による治療歴のある進行がんで、かつBRCA1/2、ATM、またはその他12のHRR関連遺伝子のいずれかに変異が見られるmCRPC患者さんを対象に実施しました。

この試験は、HRR関連遺伝子変異陽性を有する患者さんを2つのコホートに振り分けて組み入れ、解析するよう設計されました。主要評価項目はBRCA1/2またはATM遺伝子変異を有する患者さんのrPFSであり、リムパーザが臨床的効果を示した場合、HRR関連遺伝子変異陽性(BRCA1/2、ATM、CDK12およびその他11のHRR関連遺伝子)を有する全患者さんを含めた集団も対象に解析を実施しました。アストラゼネカとMSDは2019年8月、本試験が主要評価項目であるrPFSを達成したと発表しました。

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

リムパーザは、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、現在EU諸国を含む多くの国で承認されており、白金製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としても米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認されています。米国においては、HRR機能不全陽性進行卵巣がん(BRCA遺伝子変異陽性および/またはゲノム不安定性)患者さんに対するベバシズマブとの併用療法が初回治療後の維持療法としても承認されました。また、化学療法による治療歴のある生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、日本を含む多くの国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。さらに、米国、欧州およびその他数カ国においては、生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬としても承認されています。また、米国においては、HRR関連遺伝子変異を有するmCRPC(BRCA遺伝子変異陽性およびその他のHRR関連遺伝子変異陽性)の治療薬として承認されました。加えて、卵巣がん、乳がん、膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国において進行中です。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、全世界で3万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的とした新薬であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保有しています。2014年から2020年までの期間に7つの新薬発売を予定し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。
アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器・自己免疫疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジを本拠地として、当社は100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Bray et al. (2018). Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA: A Cancer Journal for Clinicians, 68(6), pp.394-424.
2. Abida et al. (2020). Rucaparib in Men With Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer Harboring a BRCA1 or BRCA2 Gene Alteration. Journal of Clinical Oncology, 38.
3. de Bono et al. (2020) Olaparib for Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer. New England Journal of Medicine, 382, pp.2091-102.
4. Cancer.Net. (2014). Treatment of metastatic castration-resistant prostate cancer. Available at: https://www.cancer.net/research-and-advocacy/asco-care-and-treatment-recommendations-patients/treatment-metastatic-castration-resistant-prostate-cancer. [Accessed September 2020]
5. Kirby, M. (2011). Characterising the castration-resistant prostate cancer population: a systematic review. International Journal of Clinical Practice, 65(11), pp.1180-1192.
6. Wu J, et al. (2010) The role of BRCA1 in DNA damage response. Protein Cell. 2010;1(2):117-123.
7. Roy R, et al. (2012). BRCA1 and BRCA2: different roles in a common pathway of genome protection. Nat Rev Cancer. 2011;12(1):68-78. Published 2011 Dec 23. doi:10.1038/nrc3181.
8. Gorodetska I, et al. (2019). BRCA Genes: The Role in Genome Stability, Cancer Stemness and Therapy Resistance. J Cancer. 2019;10(9):2109-2127.

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