アストラゼネカのリムパーザ、EUにおいて、BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの治療薬として承認取得

本資料はアストラゼネカ英国本社が2020年7月8日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。

本疾患の治療薬として承認された唯一のPARP阻害剤

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、7月8日、リムパーザ®(一般名:オラパリブ、以下、リムパーザ)が、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)転移性膵がんの患者さんの治療薬として、EUで承認されたことを発表しました。

膵がんは希少疾病であり、一般的ながんの中でも生存率が最も低く、生命を脅かす疾患です1。転移性膵がん患者さんの約5~7%がgBRCAmを有しています2

欧州委員会による今回のリムパーザに対する承認は、The New England Journal of Medicineに掲載された第Ⅲ相POLO試験の結果に基づいており、欧州医薬品庁の医薬品評価委員会による承認勧告を受けていました。

POLO試験の治験共同責任医師で、シカゴ医科大学教授であるHedy L.Kindler氏は次のように述べています。「今回の承認により、転移性膵がんの発生率が最も高い地域である欧州において、本疾患を有する患者さんに対するバイオマーカー主導による治療の新たな時代への道が開かれました。これからは、忍容性が良好な標的治療オプションとして、臨床医はリムパーザをgBRCAm転移性膵がんの患者さんに投与できるようになります」。

アストラゼネカのエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者Dave Fredricksonは次のように述べています。「転移性膵がんは、急速に進行する性質があるため、患者さんは長きにわたり予後不良を余儀なくされてきました。またその治療も過去数十年にわたってほとんど進歩がない状況でした。今回のPOLO試験において、リムパーザは、gBRCAm転移性膵がん患者さんに対する初回治療後の維持療法として、プラセボとの比較で無増悪生存期間の中央値をほぼ2倍に延長しました。今回の承認は、診断時において全ての患者さんにgBRCA検査を実施することの重要性を強く訴求するもので、欧州の患者さんに個別化治療の選択肢に関する情報を提供する一助となり得ます」。

MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発責任者でチーフメディカルオフィサーのRoy Baynesは次のように述べています。「MSDとアストラゼネカは、転移性膵がんをはじめ、治療困難ながんを患う患者さんに対する治療薬の研究を進めています。リムパーザは、現在、特定のバイオマーカーによって選択された転移性膵がん患者さんの治療薬として唯一承認されているPARP阻害剤です。この標的治療ができるだけ早く欧州全体で利用できるようなることを期待しています」。

第Ⅲ相POLO試験において、リムパーザはgBRCAm転移性膵がん患者さんの病勢進行または死に至るまでの期間をほぼ2倍に延長し、その期間の中央値はプラセボ群の3.8カ月に対してオラパリブ群で7.4カ月でした。なお、本試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルはこれまでの試験と概ね一貫していました。

今回の承認は、初回化学療法において、少なくとも16週間の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で病勢進行が認められなかったgBRCAm転移性膵腺がん患者さんに対するリムパーザ単剤維持療法を適応としています。

リムパーザは、第Ⅲ相POLO試験の結果に基づき、gBRCAm転移性膵がん患者さんの初回治療後の維持療法として米国をはじめ数カ国において承認されており、その他の地域においても薬事承認審査が進行中です。

※gBRCAm転移性膵がんに対するリムパーザの適応は、本邦では未承認です。

以上

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膵がんについて
膵がんは、アンメットニーズが高く致死率が高いがんです。膵がんは全世界で11番目に多いがんであり、がんによる死因の第7位です3,4。2018年には、世界で約46万人が新たに膵がんと診断されました1。膵がんの場合、初期段階では症状が無い、もしくは症状があっても特徴的でないことが多く、多くのケースで既に根治不能な状態になってから診断されています5,6

約80%の膵がん患者さんは、がんが他の部位に転移してから診断されており、その平均生存期間は1年未満です7。がんの新たな治療方法が進歩しているにもかかわらず、膵がんにおいては過去数十年にわたり、診断や治療にほとんど進歩がありません8。現在の治療法は、手術(手術可能な患者さんは約10~20%のみ)、化学療法および放射線療法であり、より効果的な治療オプションが強く求められています9

POLO試験について
POLO試験は、維持療法としてリムパーザ単剤投与群(300mg錠剤、1日2回)とプラセボ投与群を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第Ⅲ相試験です。本試験では、白金製剤ベースの一次化学療法で病勢進行が認められなかったBRCA遺伝子変異陽性膵がんの患者さん154人を3:2の割合で無作為化し、病勢進行が認められるまでリムパーザまたはプラセボを投与しました。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、二次進行または死亡までの期間、客観的奏効率、および健康関連のQOLでした。

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2(乳がん感受性遺伝子1および2)は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞の遺伝的安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されないまたは正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子異常を起こす可能性が高くなります。

リムパーザについて
リムパーザ(一般名:オラパリブ)はファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害は、DNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

リムパーザは、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法として、現在EU諸国を含む多くの国で承認されており、白金製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としても米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認されています。米国においては、相同組換え修復機能不全陽性進行卵巣がん患者さんに対するベバシズマブとの併用療法が初回治療後の維持療法としても承認されました。また、化学療法による治療歴のある生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、日本を含む多くの国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。さらに、米国およびその他数カ国においては、生殖細胞系列のgBRCAm転移性膵がんの初回治療後の維持療法としても承認されています。また、米国においては、相同組換え修復関連遺伝子変異(HRRm)を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の治療薬として承認されました。加えて、卵巣がん、乳がん、膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国・地域において進行中です。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、全世界で3万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および他の薬剤との併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的とした新薬であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害剤であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを数多く保有しています。2014年から2020年までの期間に少なくとも6つの新薬発売を予定し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、注力する肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんを成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社における血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器・自己免疫疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca.(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

References
1. Pancreatic Cancer UK. Pancreatic cancer statistics. Available at: www.pancreaticcancer.org.uk/statistics/ [Accessed June 2020].
2. Golan et al. (2020). Geographic and Ethnic Heterogeneity of Germline BRCA1 or BRCA2 Mutation Prevalence Among Patients With Metastatic Pancreatic Cancer Screened for Entry Into the POLO Trial. Journal of Clinical Oncology 2020; 38(13): 1442-1454.
3. Bray et al. Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. World Journal of Oncology. 2018;68(6):394-424. doi: 10.3322/caac.21492.
4. World Health Organization. IARC. (2019). Estimated number of deaths in 2018, worldwide, both sexes, all ages. Website available here. [Accessed June 2020].
5. Signs and symptoms of pancreatic cancer. Available at: www.pancreaticcancer.org.uk/information-and-support/facts-about-pancreatic-cancer/signs-and-symptoms-of-pancreatic-cancer/ [Accessed June 2020].
6. DaVee (2018). Pancreatic cancer screening in high-risk individuals with germline genetic mutations. Gastrointestinal Endoscopy. 87(6), pp.1443-1450.
7. Azar et al. (2019). Treatment and survival rates of stage IV pancreatic cancer at VA hospitals: a nation-wide study. Journal of Gastrointestinal Oncology, 10(4), pp.703-711.
8. Sheahan et al. (2018). Targeted therapies in the management of locally advanced and metastatic pancreatic cancer: a systematic review. Oncotarget. 9(30): 21613-21627.
9. Stunt, A. (2016). Pancreatic cancer: GPs can help prognosis by identifying early signs. Guidelines in Practice. Available at: www.guidelinesinpractice.co.uk/cancer/pancreatic-cancer-gps-can-help-prognosis-by-identifying-early-signs/352855.article [Accessed June 2020].