アストラゼネカのリムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける維持療法として、希少疾病用医薬品の指定を取得

プラセボとの比較において無増悪生存期間を約2倍に延長した
第III相POLO試験の結果に基づく指定

アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラは、3月17日、リムパーザ(一般名:オラパリブ)がBRCA 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵がんにおける維持療法として、希少疾病用医薬品指定を取得いたしましたのでお知らせいたします。

厚生労働省は、患者さんが5万人未満で、アンメットニーズが高い疾病の治療を目的とした医薬品に対して、希少疾病用医薬品指定を行っています。

膵がんは、一般的ながんの中で生存率が最も低く、主ながんの中で唯一、5年生存率がほとんどの国で10%未満に留まっています。

アストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselga は次のように述べています。「日本は世界で5番目に膵がんの発症率が高い国であり、その治療は過去数十年あまり進歩が見られていません。今回の指定は、日本で初めてバイオマーカーにより選定された進行膵がん患者さんに対して分子標的薬の使用が可能になった重要な一歩といえます」。

海外第Ⅲ相臨床試験(POLO試験)において、リムパーザは生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん患者さんの病勢進行または死亡に至るまでの期間をほぼ2倍に延長しました。具体的には、プラセボ群の無増悪生存期間(PFS)の中央値が3.8ヵ月であったのに対し、リムパーザ投与群では7.4ヵ月でした。なお、POLO試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、これまでの試験とほぼ一致していました。

リムパーザは、2019年に生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がん患者さんの一次化学療法後の維持療法として米国で承認取得をしており、欧州およびその他の地域においても承認審査中です。

BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんに対するリムパーザの療法は本邦未承認です。

以上

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膵がんについて
膵がんは一般的ながんの中でも生存率が最も低く、アンメットニーズの高いがんです1。日本の膵がん発症率は、世界で5番目に高く、2018年には43,000人が新たに診断されています2,3。膵がんは、日本のがんによる死因の第4位であり、2018年には37,000人が死亡しています3
膵がんは全世界で11番目に多いがんであり、がんによる死因の第7位です4,5。2018年には、世界で約46万人が新たに膵がんと診断されました5。膵がんの場合、初期段階では症状がなかったり、あるいは症状はあっても特徴的でないことが多く、多くのケースで既に根治不能な状態になってから診断されています6,7。約80%の膵がん患者さんは、がんが他の部位に転移してから診断されており、その平均生存期間は1年未満です8。がんの新たな治療方法が進歩しているにもかかわらず、膵がんにおいては過去数十年にわたり、診断や治療にほとんど進歩がありません9。現在の治療法は、手術 (手術可能な患者さんは約20~30%のみ)、化学療法および放射線療法であり、より効果的な治療オプションが強く求められています10,11

POLO試験について
POLO試験は、リムパーザ単剤投与群(300mgを1日2回投与)とプラセボ投与群を比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第Ⅲ相試験です。本試験では、プラチナ製剤ベースの一次化学療法で病勢進行が認められなかったBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの患者さん154人を3:2の割合で無作為化し、病勢進行が認められるまでリムパーザまたはプラセボを投与しました。主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS) 、二次進行または死亡までの期間、客観的奏効率、および健康関連のQOLでした。

本試験において、リムパーザはBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの患者さんのPFSを約2倍に延長し、統計学的に有意で臨床的に意義のあるPFSを示しました。具体的にはリムパーザ投与群ではPFS中央値が 7.4カ月だったのに対し、プラセボ投与群では 3.8カ月でした。また、病勢進行または死亡のリスクを47%(ハザード比 0.53[95%信頼区間:0.35-0.82]、p=0.004)減少させました。なお、ベースライン時において測定可能な病変を有していた患者さんのうち、客観的奏効が認められた患者さんの割合はリムパーザ投与群では23%、プラセボ投与群では12%(オッズ比2.30、95%信頼区間:0.89-6.76) でした。さらにリムパーザ投与群では奏効期間中央値が2年を超えていた(24.9カ月; 95% 信頼区間、14.8-計測不能)のに対し、プラセボ投与群では3.7カ月(95%信頼区間、2.1-計測不能)でした。
なお、副次評価項目のOSは、中間解析(データ成熟度46%)においてリムパーザ投与群では18.9カ月、プラセボ投与群では18.1カ月で、統計学的に有意な差は示されませんでした (ハザード比=0.91; p=0.68)。

POLO試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルは、これまでの試験で確認された既知のプロファイルとほぼ一致していました。

BRCA遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2(乳がん感受性遺伝子1および2)は、損傷したDNAの修復を担うタンパクを生成する遺伝子であり、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たします。これら遺伝子のいずれかに変異があるとBRCAタンパクが生成されないまたは正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されず細胞が不安定になる可能性があります。その結果、細胞はがん化につながるさらなる遺伝子変異を起こす可能性が高くなります。

リムパーザについて
リムパーザは、ファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬です。リムパーザによるPARP阻害はDNA一本鎖切断に結合するPARPを捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こしがん細胞を死滅させます。リムパーザはDDR経路に異常をきたした一連のPARP依存性の腫瘍タイプにおいて試験が進行中です。

リムパーザは、プラチナ感受性再発卵巣がんの維持療法として、現在EU諸国を含む73カ国で承認されており、プラチナ製剤ベースの化学療法に奏効後のBRCA遺伝子変異陽性進行卵巣がんの初回治療後の維持療法としても米国、EU、日本、中国およびその他数カ国において承認されています。また、本剤は化学療法による治療歴のある生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移性乳がんの適応症でも米国、日本を含む58カ国において承認されており、EUにおいては、局所進行乳がんも含まれます。さらに、米国においては、2019年に生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの初回治療後の維持療法としても承認されています。加えて、卵巣がん、乳がん、膵がんおよび前立腺がんに関する薬事承認審査が他の国・地域において進行中です。

アストラゼネカとMSDが共同で開発と商業化を行っているリムパーザは、進行卵巣がん、転移性乳がんおよび転移性膵がんの治療薬として承認され、現在までに全世界で3万人を超える患者さんの治療に使用されています。リムパーザはPARP阻害剤として最も広範かつ最先端の臨床試験開発プログラムを有しており、アストラゼネカとMSDは、さまざまながん種にわたり、リムパーザが単剤療法および併用療法としてPARP依存性腫瘍に及ぼす影響を解明するために協業しています。リムパーザはDDRを標的した新薬であり、アストラゼネカのポートフォリオを牽引する基盤となる薬剤です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、英国アストラゼネカ社とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A(北米およびカナダ以外ではMSD)は、世界初のPARP阻害薬であるリムパーザおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブについて、複数のがん種において共同開発・商業化するがん領域における世界的な戦略的提携を発表しました。両社は、リムパーザおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として共同開発します。なお、リムパーザおよびセルメチニブと、各々の会社が保有するPD-L1またはPD-1阻害薬との併用療法は各々の会社で開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを数多く保有しています。2014年から2020年までの期間に少なくとも6つの新薬発売を予定し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社における血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。英国ケンブリッジに拠点を置く当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細については http://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。

日本においては、主にオンコロジー、循環器・代謝/消化器疾患、呼吸器疾患を重点領域として患者さんの健康と医療の発展への更なる貢献を果たすべく活動しています。当社については http://www.astrazeneca.co.jp をご覧ください。

References
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2. World Cancer Research Fund International. Pancreatic cancer statistics. Available at: www.wcrf.org/dietandcancer/cancer-trends/pancreatic-cancer-statistics [Accessed March 2020].
3. World Health Organization. IARC. (2018). Japan. Globocan 2018. Available at: https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf [Accessed March 2020].
4. Bray et al. Global cancer statistics 2018: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. World Journal of Oncology. 2018;68(6):394–424. doi: 10.3322/caac.21492.
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8. Azar et al. (2019). Treatment and survival rates of stage IV pancreatic cancer at VA hospitals: a nation-wide study. Journal of Gastrointestinal Oncology, 10(4), pp.703-711.
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11. 膵癌診療ガイドライン 2019版 http://www.suizou.org/pdf/pancreatic_cancer_cpg-2019.pdf