アストラゼネカのオラパリブ 生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性転移乳がん治療薬として米国食品医薬品局(FDA)より承認

本資料はアストラゼネカ英国本社が2018年1月12日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。



~卵巣がん以外の適応で承認された最初で唯一のPARP阻害剤~

~標準的な化学療法との比較で病勢進行もしくは死亡のリスクを42%低減~

 

アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)およびメルク・アンド・カンパニー(本社:米国ニュージャージー州ケニルワース、以下「メルク(北米以外ではMSD)」)は、2018年1月12日、米国食品医薬品局(FDA)が、過去に術後補助療法、術前補助療法あるいは転移がんへの治療として化学療法を受けた病的変異または病的変異疑いに分類される生殖細胞系列BRCA(gBRCA)遺伝子変異陽性、ヒト上皮成長因子受容体2 (HER2) 陰性転移乳がん患者さんへのオラパリブの使用を承認したことを発表しました。対象となるホルモン受容体陽性(HR+)乳がん患者さんは過去に内分泌療法を受けているか、内分泌療法が不適切と判断された患者さんになります。また、投与患者さんの選択はFDAにより承認されたMyriad Genetics社のコンパニオン診断薬に基づいて行うこととされています。

アストラゼネカの上級副社長兼グローバルオンコロジー事業最高責任者であるデイヴィド・フレドリクソンは次のように述べました。「オラパリブは転移乳がんの適応で承認された最初で唯一の、かつ、卵巣がん以外の適応で承認された唯一のPARP阻害剤です。ホルモン受容体やHER2に加えてgBRCA遺伝子変異の確認は、本疾患の治療選択における非常に重要なステップとなります。本承認は乳がん患者さんに大きな意義をもたらします」。

MSDリサーチラボラトリーのシニアバイスプレジデント、グローバル臨床開発の責任者兼チーフメディカルオフィサーであるRoy Baynesは次のように述べました。「オラパリブの本追加承認は、治療が困難なgBRCA遺伝子変異陽性HER2陰性転移乳がんの患者さんに重要な進展をもたらします。また、がん治療薬の開発に関するアストラゼネカと当社の重要な提携をさらに進展させるものです」。

本承認は、医師の選択した化学療法(カペシタビン、ビノレルビン、エリブリンのいずれかを選択)とオラパリブを比較検討した無作為化、非盲検第III相OlympiAD試験の結果に基づきます。本試験において、オラパリブ群は、化学療法群に比べ有意に無増悪生存期間 (PFS) を延長し、病勢進行または死亡のリスクを42%低減しました(ハザード比 0.58; 95%信頼区間 0.43-0.80; P=0.0009、PFS 中央値 7.0 カ月対 4.2 カ月)。また、測定可能病変を有する患者さんにおける客観的奏効率(ORR)では、化学療法群(n=66)の23% (95% 信頼区間 13-35)に対し、オラパリブ群(n=167) では52% (95% 信頼区間 44-60)であり、約2倍のORRを示しました。

加えて、完全奏効率は、化学療法群1.5%に対し、オラパリブ群は7.8%でした。このOlympiAD試験のデータはNew England Journal of Medicineの2017年6月号に掲載されています。

ペンシルべニア大学AbramsonがんセンターのBasser Center for BRCAのエグゼクティブディレクターであり、OlympiAD試験の米国の責任者であるSusan M. Domchekは次のように述べました。「BRCAに関連する転移乳がんと診断される患者さんは多くの場合他の乳がん患者さんよりも若く、その疾患ははるかに悪性が高く治療が困難です。現在、転移乳がんが根治できる治療法はなく、本日の承認は、これらの患者さんの病勢進行を遅らせる可能性のある新たな標的治療選択肢を提供します」。

OlympiAD試験のオラパリブ群の患者さんに最もよく見られた副作用(発現率20%以上) は悪心 (58%)、貧血 (40%)、疲労 (無力症を含む) (37%) 、嘔吐 (30%)、好中球減少 (27%)、気道感染 (27%), 白血球減少 (25%)、下痢 (21%)、および頭痛 (20%) でした。投与中止に至った患者さんの割合は、化学療法群の8%に対し、オラパリブ群は5%でした。

本承認は、これまでオラパリブにより4,000人以上の進行卵巣がん患者さんを治療してきた米国で承認された3つ目の適応症です。オラパリブはPARP阻害剤の中で最も広範な臨床開発プログラムを有しており、アストラゼネカおよびMSDは乳がん、卵巣がん、前立腺がんおよび膵臓がんを含む複数のがんにおいて、より多くの患者さんにオラパリブを一日も早くお届けするために協働していきます。

持続可能かつ継続的社外提携収入
2017年7月に発表されたMSDとのがん領域における提携に基づき、アストラゼネカは2019年までにオプションへの対価に加え、売上連動および承認連動対価の形で、60億ドル超の持続可能かつ継続的社外提携収入を今後取得できる可能性があります。オラパリブの本新規承認後、アストラゼネカは持続可能かつ継続的社外提携収入として7,000万ドルを受領します。

 

※オラパリブは本邦未承認です。

以上

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OlympiAD試験について
OlympiAD試験は302例の病的変異または病的変異疑いに分類されるgBRCA1またはgBRCA2遺伝子変異を有するHER2陰性転移乳がん患者さんにおけるオラパリブ(300 mg 1日2回投与)の有効性および安全性を医師の選択した化学療法と比較検討した無作為化、非盲検、多施設共同第III相試験です。本国際共同試験は欧州、アジア、北米および南米の19カ国において実施されました。

OlympiAD試験に参加した患者さんはHER2陰性gBRCA1またはgBRCA2遺伝子変異陽性の乳がん(HR+またはトリプルネガティブ乳がん)を有しており、転移がんに対しオラパリブの投与を受けました。本試験のオラパリブ群および化学療法群の患者さんの約半数の乳がんはHR+であり(n=152)、約半数の乳がんはトリプルネガティブでした(n=150)。オラパリブ群(205例)の年齢中央値は44歳でした(範囲:22から76歳)。試験登録前、患者さんはアントラサイクリン(禁忌でない場合)およびタキサン系化学療法の術後補助療法、術前補助療法あるいは転移乳がん治療としての前治療を受けており、また転移乳がんへの化学療法による前治療は多くとも2次治療までの患者さんが対象とされました。ホルモン受容体陽性患者さんは、少なくとも過去1回は内分泌療法を受けているか、内分泌療法が不適切であるとされた患者さんが対象とされました。内分泌療法による前治療は化学療法による前治療とはみなされませんでした。

本試験の主要評価項目は、盲検下での独立中央判定(BICR)による評価に基づく、無増悪生存期間(PFS)でした。副次的評価項目は全生存期間、二次進行または死亡までの期間、客観的奏効率および健康関連の生活の質への効果でした。

転移乳がん(MBC)について
乳がんの腫瘍増殖を促進する3つの主な受容体は、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)およびHER2受容体です。患者さんの乳がんは、これら受容体に対し陰性または陽性と判定されます。腫瘍がPRおよび・またはER陰性である場合、それはHR+とみなされます。また、3つすべての受容体に対し陰性と判定された場合、それはトリプルネガティブとみなされます。

MBCは乳がんの最も進行したステージ(ステージIV)であり、がん細胞が最初の腫瘍部位を超えて乳房以外の体の他の部位に転移した時に発現します。

過去30年間に治療選択肢は増加しましたが、転移乳がんと診断された患者さんを治癒する方法はなく、診断後の5年生存率はわずか26.9%です。このため、転移乳がんの治療では出来る限り長く病勢の進行を遅らせ、患者さんのクオリティ・オブ・ライフを改善あるいは最低限維持することを目的に行われます。

米国では2018年に約155,000人のMBC患者さんが存在すると推定されており、この人数は2020年までに約160,000人に増加すると予測されています。

生殖細胞系列BRCA(gBRCA)遺伝子変異について
BRCA1およびBRCA2は損傷したDNAの修復に関わるタンパク質を生成するヒト遺伝子であり、細胞内遺伝子の安定性維持に重要な役割を果たします。これらの遺伝子のいずれかが変異あるいは変化すると、BRCAタンパクが生成しないまたは正常に機能せず、DNA損傷が適切に修復されない可能性があります。その結果、細胞のがん化につながるさらなる遺伝子変化を起こす可能性が高くなります。

オラパリブについて
オラパリブは、FDAに承認された最初の経口ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であり、BRCA変異などのDNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導する最初の標的治療薬です。特に、複数のin vitro試験によりオラパリブによる細胞毒性はPARP酵素活性の阻害およびPARP-DNA複合体の生成を増加させる可能性があり、その結果DNA損傷およびがん細胞死が生じることが示されています。

オラパリブはDDR経路に異常をきたした一連のがん種において開発が進行中であり、アストラゼネカの業界を主導するがん細胞のDNA損傷応答(DDR)メカニズムを標的とする新薬候補のポートフォリオの基盤となる化合物です。

アストラゼネカとMSDのがん領域における戦略的提携について
2017年7月、アストラゼネカと北米以外ではMSDとして知られる米国ニュージャージー州ケニルワースに本社を置くメルク・アンド・カンパニーは、アストラゼネカの世界初のPARP阻害剤であるオラパリブおよび現在開発中であるMEK阻害剤セルメチニブの複数のがん種における共同開発・商業化に関する世界的な戦略的提携を発表しました。本提携は、PARP阻害剤とMEK阻害剤は一連のがん種においてPD-L1/PD-1阻害剤と併用することが可能であることを示す増加しつつあるエビデンスに基づくものです。共同で、両社はオラパリブおよびセルメチニブを他の可能性のある新薬との併用療法および単剤療法として開発します。また、単独で、各社は各々のPD-L1およびPD-1薬との併用療法としてオラパリブおよびセルメチニブを開発します。

アストラゼネカにおけるオンコロジー領域について
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、急速に拡大しつつある患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保持しています。2014年から2020年までの期間に発売を予定する少なくとも6つの新薬、および低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当てたNew Oncologyをアストラゼネカの5つの成長基盤のひとつとして進展させることに注力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。

アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子と耐性、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。

アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・代謝疾患、および呼吸器の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。また、炎症、感染症およびニューロサイエンスの領域においても、他社との提携を通じて積極的に活動しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttp://www.astrazeneca.comまたは、ツイッター@AstraZeneca(英語のみ)をフォローしてご覧ください。