ゲフィチニブ(イレッサ錠250)の安全使用のための専門家からの提言

2003年 05月 20日

はじめに

ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)は2002年7月5日承認され、発売された新しいタイプの抗癌剤です。ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)の対象となる患者さんは、手術ができない、または、何らかの治療の後に再発した非小細胞肺がんの患者さんです。発売以来多くの患者さんに使用され、重大な副作用症例が報告されましたことについては、当社はこの事態を真摯にうけとめ、薬剤の安全な使用に向けての注意喚起や医師と患者さんへの情報提供を継続的に行っております。情報提供活動のひとつである「ゲフィチニブ(イレッサ錠250)の急性肺障害・間質性肺炎に関する専門家会議最終報告」がまとまりましたのでここにご報告申し上げます。


専門家会議 最終報告について

専門家会議は、昨年12月5日の第1回会議から4回開催されました。会議の目的は、ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)を使用する際の安全確保のために、急性肺障害・間質性肺炎を発症した症例の過去にさかのぼっての検討(レトロスペクティブ分析)を行うことに焦点をあてたものでした。
次のまとめはレトロスペクティブ分析により、詳細に調査した152例の症例を解析した結果で、専門家委員から結論として報告されたものです。

1)急性肺障害・間質性肺炎を発現したときに死亡する可能性が高くなりそうな要素(仮説的因子)が6つ抽出されました。

(1)男性
(2)喫煙歴がある
(3)腺癌ではないこと 注1.)
(4)パフォーマンス・ステータス(Performance Status)注2.)が2以上であること
(5)特発性肺線維症注3.)等(の間質性肺疾患)の合併(同時にこの症状があること)
(6)ゲムシタビン(抗がん剤)による前治療歴のないもの

この中で、特に(5)の特発性肺線維症等の合併に関しては、急性肺障害・間質性肺炎の発現のリスクとなる可能性も疑われており、今後の重要な検証課題としてあげられました。
((3)と(6)は他の因子(特に(6))が大きく影響していることが考えられています。)

注1.)癌の組織型、腺癌ではないこととは:

  • 肺がんは、がん細胞を顕微鏡で見ることによって、主に4つの組織型(小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)に分類されます。
  • 組織型によって、性質やできる場所が異なります。また治療法も大きく分けて、小細胞がんと非小細胞がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)で異なります。

注2.)パフォーマンス・ステータスとは:

  • 患者さんの全身状態の指標。0(無症状・社会生活可能)-4(終日就寝・介助が必要)まで分けられており、進行がんの予後(病気に罹った後の経過)に関係する要素となっています。

注3.)特発性肺線維症とは:

  • 肺胞と肺胞の間の部分が原因不明の炎症により線維等が沈着して肺の壁が厚くなる病気で、間質性肺炎の慢性型とも言われています。壁が厚くなる為に、肺でのガス交換が上手く出来なくなり、呼吸困難が生じます。


2)発症率について

性別、年齢、喫煙歴、前治療歴(これまでの治療の種類や経過)等の背景要素と呼ばれる項目には、日本と海外との間で明らかな差は認められませんでした。しかし、日本におけるILDの発症率は約2%(死亡率0.6%)と推定され、海外に比べて約6倍と高頻度であり、その原因の解明は重要な今後の課題です。


3)中間報告との違い

中間報告には無かった点で、新たに追加された部分は、特発性肺線維症等の既存が間質性肺炎・急性肺障害 の発症の要素である可能性も否定できない、という点です。
すべての検討を通じて、特発性肺線維症等が既存する患者さんは、ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)投与における間質性肺炎・急性肺障害の症例の予後不良と関連する重要な要素であると専門家委員は判断しました。ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)投与に際する注意点として、投与前にCT等によって特発性肺線維症等の有無を確認することが重要です。
当社はこの専門家委員の提言を受け、厚生労働省と協議し、ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)使用上の注意の改訂を行い、医療機関への更なる注意喚起を行っております。

4)投与についての注意・早期診断、早期治療の重要性
投与に際しての注意として、次の各点を医療機関にお願いしています。

 

  • 間質性肺炎、肺線維症のある患者さん、肺機能の悪い患者さん、全身状態の悪い患者さんには慎重に投与すること
  • 4週間を過ぎても、間質性肺炎が発症し、同じような経過をたどる場合があります。
    投与中は十分な注意が必要です。
  • 患者さんや家族の方々に十分な事前説明をしていただき、同意を頂いた上でゲフィチニブ(イレッサ®錠250)の投与を開始してください。

早期診断

  • ・熱、乾いた咳、息切れなどが出たらすぐに主治医に連絡し受診してください。
  • ・症状に異常が無くても、主治医は聴診を注意深く実施してください。
  • 何らかの症状を見たら、速やかに確定診断と他の疾患との鑑別のための検査を進めてください。

治療指針

  • 間質性肺炎が疑われた場合は、直ちにゲフィチニブ(イレッサ®錠250)の投与を中止してください。
  • 出来るだけ早期にステロイドパルス療法など積極的な治療を行ってください。
  • ステロイド療法等の詳細については、専門医に相談してください。

5)これからの課題

 

当社は、ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)は進行非小細胞肺癌の治療には重要で有益な薬剤であると考えています。有効性と安全性を科学的に立証し、適正使用を推進するために、次のような検討課題を解決していく必要があります。

  1. ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)の有効性をより高めるために、どのような患者さんに投与したらゲフィチニブ(イレッサ®錠250)の有効性が発揮されるのか、患者群の選択と投与方法を開発すること。
  2. 治療の選択肢のない患者群に対してのゲフィチニブ(イレッサ®錠250)投与の可能性を検討すること。
  3. 急性肺障害・間質性肺炎発現率やその予後についてゲフィチニブ(イレッサ®錠250)と他の抗癌剤と適正に比較・評価をすること。
  4. 急性肺障害・間質性肺炎の予後を悪化させる可能性のある要素を正確に評価すること。
  5. 発症のリスクと疑われる特発性肺線維症のリスクの程度を評価し、また、他の発症リスク要素の検索と検証をすること。
  6. 間質性肺炎・急性肺障害を早期に発見し、迅速に、より正確な治療法を見つけるための情報を得ること。

こうした検討課題を解決するために、現在、遺伝子解析的な手法を含む複数の臨床試験・調査が企画されています。また、特に時間がかかる試験に関しては、適宜中間データの公表も計画しています。当社は、この課題を速やかに検討・検証していくためには、厚生労働省や医療関係者の協力が不可欠であると考え、関係者の皆さまとの協議、対話を続けております。

当社は、今後とも十分な安全性・適正使用情報の収集、提供に努め、有効性・安全性を検証するため市販後臨床試験の実施を含めた安全対策措置を講じながら、ゲフィチニブ(イレッサ®錠250)を他に治療の選択肢が少ない手術不能又は再発非小細胞肺癌患者さんに新たな治療の機会として提供していくことを当社の社会的使命であると考えます。

肺がんについての詳細は、こちらをご覧下さい。
(エルねっと:http://www.lnet.info/